【オリヴェイラ特集】「家宝」オリヴェイラお得意のびっくりエンディング映画

家宝(2002)
O PRINCIPIO DA INCERTEZA(2002)

監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:レオノール・バルダック、
レオノール・シルヴェイラ、
リカルド・トレバetc

評価:65点

オリヴェイラDVD-BOXに収録されている作品「家宝」を観た。原題は直訳すると「不確定性原理」。なんと物理用語だ。不確定性原理は解説すると非常に厄介かつ、物理が苦手だったブンブンが正確に解説できる自身がないので興味ある人はググって欲しい。ただ、一つ言えるのは、不確定性原理の「粒子を観測しようとしても、光がその粒子の動きに影響を与えるため、性格に観測することは困難」という理論と、ファムファタールものが結びついていることだ。

果たしてどういった話なのだろうか。

「家宝」あらすじ

聖母マリア荘を舞台に、美女に惑わされ怪しい仕事を始める青年と、その青年に恋心を寄せていたが、富豪と結婚してしまった女性の四角関係が描かれていく…

歯車の乱れは測定不能

魔性の女によって、崩れていく聖母マリア荘の家族達を描いた本作は、いつ歯車が乱れたのかが分かりにくいほど行間多い作品。流石原題が「不確定性原理」だけある。

非常に難解でブンブンも完全に理解したと言い切れない本作だが、「アブラハム渓谷」の姉妹作だと思って観ると面白い。どちらもドウロ河を舞台に物語が進み、時と場所の隔たりを列車の車窓から見える圧巻な景色で描写している。そして「アブラハム渓谷」では女性の悲劇が描かれていたが、本作では男性の悲劇が描かれる。

青年は、怪しい女の仕事に乗りさえしなければ、幼なじみの女の子と結婚し平和な暮らしが出来たにもかかわらず、闇の仕事に手を付けてしまう。その天罰が、非常に滑稽ながらも凄惨な形でジェットコースターのように観客に押し寄せてくる。

オリヴェイラ監督は、オラキオ体操クラブの「思わぬエンディングを迎えるB級インド映画」かと突っ込みを入れたくなるような唐突で衝撃的な終わり方をする。それこそ「永久の語らい」のアレや「ブロンド少女は過激に美しく」のアレなんか観る者全員スッテンコロリン椅子から転げ落ちそうなエンディングだったが、この「家宝」も、原作がポルトガルの娼館火災事件から着想を得て書かれたと知った状態で観ても、あまりにびっくりするエンディングなのだから、つくづくオリヴェイラ監督のマジックは凄いと思う。個人的に消化不良だったのでまた観てみたい作品だ。

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