【カンヌ国際映画祭特集】「パターソン」ジャームッシュ版深夜食堂※ネタバレなし

パターソン(2016)
PATERSON(2016)

監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー、永瀬正敏etc

評価:65点

昨年の第69回カンヌ国際映画祭でシネフィルを驚かせたことは、ジム・ジャームッシュが2本も出品していたことにあります。ひとつはイギー・ポップのドキュメンタリー「ギミー・デンジャー(GIMME DANGER)」。そして、もう一つはアダム・ドライバー主演の「パターソン」です。後者に関しては、批評家の星表で「ありがとう、トニ・エルドマン」や「エル ELLE

」に匹敵する程の高評価にも関わらず無冠に終わりました。

今回、「パターソン」のDVDを入手したのでウォッチしてみました。果たして…

「パターソン」あらすじ

バスドライバーは毎日通勤時間に詩を考え、そして勤務が終わったらバーに繰り出す。そんな彼の一週間を見てみよう!

ジャームッシュらしくない作品

本作は、いつものジャームッシュ映画のような濃く、ユニークな演出を楽しみにして観ると肩すかしを食らうかもしれません。ジャームッシュ映画と言われなきゃ、分からないほど今回はいままでとは違った作風をしています。非常に地味で、正直ブンブン、ユニークな傑作の多い今年において本作をベストテンに入れるかと聞かれたら微妙なところがあります。

でも!本作は普通の監督がゼッタイ出来ない凄まじい映画です。
なんたって、あらすじが一行で終わるほど、何も起きません。ただただ、バスドライバーの一週間を映すだけという、他の監督が撮ったら間違いなく退屈してしまう内容なのです。

創作の過程が美しい!

そんなミニマムな作品「パターソン」は、人間の細かい気づきを重層的に描くことで深みと楽しみを与えています。

バスドライバーは毎朝、通勤途中に脳内で詩を考えます。

When you’re child
you learn there are three dimentions.
Heght, width, and depts.
Like a shoe box.

あなたが子供だった頃
あなたは3次元があることを学ぶ。
高さ、幅、そして奥行き。
靴箱のように。

隠微ながらも、どこか心に残る詩が、勤務開始直前、勤務中、歩いている時にドンドン紡がれていく。その様子に心地よさを感じます。しかも、詩が生まれる瞬間をジム・ジャームッシュは超絶技巧な脚本で描き出す。しっかりと、妻との会話、道で遭遇した人、さらにバスの車内で乗客が繰り広げる会話が複線となって詩に影響を与えているところが素晴らしい。

確かに、人がモノを創作する際、無意識・意識関わらず、過去の記憶から生み出されますよね。ジャームッシュの洞察力に感銘を受けました。

実は深夜食堂だった!!

そして、この「パターソン」。意外にも「映画 深夜食堂」に近い癒やしも与えてくれます。「映画 深夜食堂」は、その名の通り深夜営業の食堂に集まる人々を描いた作品。相当綿密な脚本でないと退屈してしまいそうな「日常系」映画です。「パターソン」では主人公のバスドライバーが、毎晩ペットの犬を行き連れ(この犬がメチャクチャ可愛い♡)バーに繰り出し世間話をするのだが、このノリが「深夜食堂」に似ている。自称俳優、黒人の双子、そしてセクシーねぇちゃん等。個性的なメンバー達が織りなすタランティーノもびっくり痴話話に癒やされました。そう、これはジャームッシュ版「映画 深夜食堂」だったのです。

永瀬正敏出現!

本作では、「ミステリー・トレイン

」で主役を務めた永瀬正敏が謎の日本人詩人役として登場し、バスドライバーに語りかけます。この会話がウィットに富んでいて痺れます。きっと観終わった後、「A ha~」と永瀬正敏のモノマネをしたくなるでしょう。

日本公開は?

そんな「パターソン」、日本公開は8/26(土)です。ちなみにイギー・ポップのドキュメンタリーは9/2(土)及びカリコレ2017にて上映されるので、是非ウォッチしてみてください!!

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