*

【カンヌ国際映画祭特集】「ELLE エル」バーホーベン×ユペールのレイプ・トラウマ講座

【カンヌ国際映画祭特集】「ELLE エル」バーホーベン×ユペールのレイプ・トラウマ講座

エル(2016)
Elle(2016)


監督:ポール・バーホーベン
出演:イザベル・ユペール、
クリスチャン・ベルケルetc

評価:75点

2016年カンヌ国際映画祭でシネフィル驚愕の事件が発生した。
それは、ポール・バーホーベンの新作がカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選ばれたのだ。バーホーベンと言えば、「ロボコップ」や「スターシップ・トゥルーパーズ」といった通俗的な作品や「ショー・ガール」「氷の微笑」といった悪趣味官能映画を撮る監督です。そんな彼が世界三大映画祭の舞台に躍り出たのです!

しかも、無冠に終わったものの、批評家の評価はトップレベルで、フランスの権威ある映画誌カイエ・ドゥ・シネマの2016年ベストテンでは2位の座を仕留めました。また、この前のアカデミー賞ではフランス映画にもかかわらず主演のイザベル・ユペールが主演女優賞にノミネートされるほど、話題になりました。

日本公開が2017年夏と非常に遅いため、今回DVDを輸入し、観てみました。
果たして…

「ELLE エル」あらすじ

ゲーム会社で経営者をしているミシェルは、ある日謎の男にレイプされてしまう。周りの人には悟られないよう平静を保っているが、段々ミシェルの心の奥に眠るトラウマが彼女を支配していく…

自宅侵入映画ブーム

最近異常に似たような話が流行っている。昨年、東京国際映画祭で上映された「空の沈黙」。2017年サンダンス国際映画祭グランプリ作品「この世に私の居場所なんてない」、そしてアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「セールスマン」。いずれも、自宅に侵入された女の心情変化を描いた作品です。

「空の沈黙」、「この世に私の居場所なんてない」は既に鑑賞済みなのだが、どちらもそこまで私の心に惹きつけるものはなかった。しかし、このバーホーベンの「ELLE」は、壇蜜の「甘い鞭」に近い濃厚なトラウマ心情が描かれており、ブンブンの心を鷲掴みにした。

トラウマの心情

本作は、何も知らない方が楽しめる。シリアスな話に見えて、とんでもないコメディ映画になっているので、詳しい内容は伏せておく。ただし、本作を観る上で注目して欲しいポイントがあります。それは「トラウマの心情」です。主人公ミシェルはゲーム会社で独裁者として経営管理している。何でも自分一人で乗り越えようとする。そんな彼女がレイプされる。するとどうなるでしょう?

そう、一人でメンタルケアをしようとします。職場の人間だけでなく、家族にも悩みや苦しみを隠そうとする。「強い女」でいようとする。しかし、レイプの衝撃を忘れることができない。そして、段々と気持ちが「もう一回、犯人に自宅を襲撃して欲しい」「もう一回、犯してほしい」と思うようになってしまうのです。その後の展開は観てのお楽しみ。

イザベル・ユペールの説得力

強い女性が、問題を一人で解決しようとして間違った方向に行ってしまう。この少しずつ揺らいでいく繊細な心情変化をイザベル・ユペールが濃密に演じきっている。ポーカーフェイスでいようとしているのだが、感情が溢れ出しそうになっている臨界点を絶妙な表情捌きで演じきる。観客は「あぁ、超えてはいけないラインを超えてしまう!!!」と冷や汗を搔きながら観るであろう。彼女の演技から滲み出るトラウマに説得力があった。本作は、イザベル・ユペールのマスターピースであることは言うまでもない。

チェ・ブンブンシネマランキング2017には…

ただ、今年のベストテンに入れるかと言われたら、イラン映画「セールスマン」を観ないと分からないところがある。正直、「ELLE」より「T2 トレインスポッティング」やパキスタン映画「娘よ」、日本公開未定の法廷劇「Denial」の方を推したい。カンヌ国際映画祭ものであれば、「ネオン・デーモン」派でもあります。

ただ、傑作には間違いないので、今夏はバーホーベン映画を観に映画館へLet’s Go!

ブロトピ:映画ブログ更新

関連記事

【オリヴェイラ特集】「メフィストの誘い」ファウスト映画にハズレなし

メフィストの誘い(1995) LE COUVENT(1995) 監督:マノエル・ド・オリヴェ

続きを読む

【隠れたアカデミー賞候補作】「13th-憲法修正第13条-」、「バース・オブ・ネイション」公開延期になった今観るべきドキュメンタリー

13th-憲法修正第13条-(2016) 13th(2016) 監督:エヴァ・デュヴァルネ

続きを読む

“Ç”デンマーク産エクストリーム誘拐「真夜中のゆりかご」

試写会で「真夜中のゆりかご」当る! ぴあ映画生活の試写会プレゼントでで デンマーク映画「真夜

続きを読む

【解説】『エンドレス・ポエトリー』はホドロフスキー版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』だ!

エンドレス・ポエトリー(2016) 原題:Poesia Sin Fin 英題:Endless P

続きを読む

【続編】「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」戸田奈津子だがNo Problem!トムクルーズに惚れろ!

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK(2016) Jack Reacher: Nev

続きを読む

2016年秋岩波ホール上映決定「とうもろこしの島」ジョージア産アート映画パリUGC CINÉ CITÉにて

パリChâtelet-Les hallの駅地下に 映画館がある。 ブンブン切望するUGC系列

続きを読む

テレビの世界に惚れた時代の懐古「夏をゆく人々」ウィーンのミニKINO DE FRANCEにて

オーストリアの映画館は基本 ドイツ語吹き替えのようだ! しかも、目当てのケン・ローチ 最新

続きを読む

“Ç”第65回ベルリン映画祭終了 2015年金熊賞はイラン映画「Taxi」

ベルリン映画祭閉幕 先日2/15まで開催されていた 世界三大映画祭のひとつ ベルリン映画祭

続きを読む

“Ç”日本の映画館でヒップホップしようぜ!「ワイルド・スタイル」

ヒップホップ界の聖書「ワイルド・スタイル」映画が日本で巡業! 大学でヒップホップのレポートを書

続きを読む

“Ç”「ボーダーライン」公開直前!メキシコ麻薬戦争ドキュメント「皆殺しのバラッド」

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇(2013) NARCO CULTURA(2013)

続きを読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP ↑