2016年ブンブン映画ベストテン(新作洋画編) 1位は「痛ましき謎への子守唄」

2016年ブンブン映画ベストテン
(新作洋画編)

今年は、
劇場公開の新作洋画が
不作で、ベストテンに
入れるほどの凄い
作品に乏しかった。

しかしながら、
東京国際映画祭や
飛行機の機内エンタテイメント
VODで鑑賞した作品の中に
傑作を沢山見つけました。
特にNetflixでは
良作を沢山見つけることが
でき、ランクインこそ
しなかったが、

↑ほぼ1シーンワンカット
100分弱5カットの
「手遅れの過去」は大傑作ですよ~

Netflixで観た

「最後の追跡」
「スペクトル」
「手遅れの過去」
「ホワイト・ヘルメット」
「くすぐり」

は個人的に最後まで悩みました。

※青下線をクリックすると各作品のレビューが観られます。

1.痛ましき謎への子守唄(2016)

鑑賞環境:東京国際映画祭

東京国際映画祭で8時間耐久レース
として観た本作は、単純に
フィリピンの革命を描いた話ではなかった。
なんと映画史を全力で描いた怪作でもあったのだ。

映画監督が映画史を語る際、
ジャン=リュック・ゴダールの
「映画史」や
レオス・カラックスの
「ホーリー・モーターズ」の
ように、物語ることを
諦めイメージで構成する傾向がある。

しかしながら、本作は意図的か
どうかは定かではないが、
リュミエール時代から
ベルイマンの時代、
そして
「マッド・マックス/怒りの
デス・ロード」までを、
フィリピンの歴史や文化と
統合しつつ
重厚に描いているのだ。

世界に一本しか映画を残せない
としたら私は間違いなく
本作を選ぶ。

とにかく私の好きなもの
全てが詰まった怪作でした。

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2.サウルの息子(2015)

鑑賞環境:ヒューマントラストシネマ有楽町

アウシュビッツを描いた作品は多々あるが、
多くの作品の収容所シーンは
綺麗だったり、
感動ポルノさながらお涙
頂戴だったりする。

しかしながら、本作は
アウシュビッツ収容所で
ユダヤ人殺しを遂行する
ユダヤ人(=ゾンダーコマンダー)
の当時の日々を徹底的に
再現している。

ホロコーストドキュメンタリー
「SHOAH」を観ても非常に
正確なのがよくわかる。

ゾンダーコマンダー経験者の
心の鍵穴の隙間から覗く
凄惨な戦場。
5感で体感するヤバさに
全身が痺れた。

3.オリ・マキの人生で最も幸せな日(2016)

鑑賞環境:東京国際映画祭

トーキョーノーザンライツ
フェスティバル2017
での上映が決まりテンションが
アゲアゲだ!

フィンランドのボクサーが
ある女性に惚れて
試合どころじゃなくなる
様子をヌーヴェルヴァーグ
のような懐かしい演出で
描いた作品。

とにかくオリ・マキくんの
一途で甘すぎる恋にブンブンも
メロメロだ!

しかもヒロインがあまりにも
ブンブンのタイプで、
そして最後の最後まで粋に
演出してくれる
サービス精神にノックアウト
された。

これはマジで劇場公開希望だ!

4.リリーのすべて(2015)

鑑賞環境:TOHOシネマズ新宿

今年の同性愛者映画で
多くの人が「キャロル」に
軍配を上げているのだが、
どうしても
今年観た
ダグラス・サークの
「天が許した給うすべて」や
ファスビンダーの
「不安と魂」の方が
凄すぎて霞んでしまう。

しかし、それでも尚
輝きを持っていたのが
この「リリーのすべて」だ。

なんたって、本作は
同性愛者映画の中で
最も重く哀しいドラマに
観ているコチラが
息苦しさに
押しつぶされそうになったからだ。

夫が同性愛になるきっかけを
作ってしまったのが、まさかの
奥さん。奥さんは「あの時、
夫に女装させていなければ」
と後悔する。しかも、
夫はドンドン男性性を
失い、妻への恋愛感情が
薄れていく。

この極限状態を、
あまりに特殊な状態を
演じきったアリシア・ヴィキャンデル
とエディ・レッドメインに
拍手喝采だ!

そして、あまりの切なさに
号泣した作品である。

5.苦い銭(2016)

鑑賞環境:Festival Scope

2017年日本公開が決まっている、
王兵ドキュメンタリー最新作。
王兵監督作は観客に
没入させることで
中国社会を体感させる
特徴がある。

そのため、どうしても
上映時間が長くなる。
そしてそれが時として
冗長すぎることに
繋がっているのだが、
本作は時間配分を
スマートに決めることで
観客にシャープな
視点をお届けしている。

今回は中国版ズートピアだ!
田舎から出稼ぎに来た人々が
毎日ミシンで必死に服を作るも
僅かな日銭しか得られず、
家もプライバシーすらない
ボロ屋で暮らす羽目になる。
女性は折角の稼ぎを
夫に搾取され、
金を払わないと離婚沙汰になる。

ユートピアを夢見ても、
地獄しかない中国の現状を、
決して外国人監督が立ち入れない
角度から観察していく鋭い視点に
圧倒されっぱなしだった。

一般的に経済発展国で、
世界経済を今や牛耳っていると
いわれる中国だが、
その奥深くの地獄を巡る
神曲のような作品であった。

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