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【アルベルト・セラ特集】『騎士の名誉』テリー・ギリアムのドンキホーテが上映されている裏側で

【アルベルト・セラ特集】『騎士の名誉』テリー・ギリアムのドンキホーテが上映されている裏側で

騎士の名誉(2006)
Honor de Cavalleria


監督:アルベルト・セラ
出演:リュイス・カルボ リュイス・セラーetc

評価:65点

第71回カンヌ国際映画祭クロージングででテリー・ギリアム最新作『ドンキホーテを殺した男(The Man Who Killed Don Quixote)』が上映された。本作は、19年間の間8回もの映画化挑戦に失敗し、そしてようやくカンヌ国際映画祭クロージング上映が決定するものの、上映を巡って以前の製作プロデューサーであるパウロ・ブランコがイチャモンをつけ始めたことから裁判沙汰にまで発展した呪いの企画である。その幻の映画がカンヌで公開されたのだ。ブンブン、観たいのはやまやまだったが、流石に不可能だったので、渋谷イメージフォーラムのアルベルト・セラ特集で上映されるドンキホーテ映画『騎士の名誉』を観てきた。



↑イメージフォーラムがいつの間にか座席指定システムに変わっていた。システムは自体は新宿武蔵野館やヒューマントラストシネマ系列と同じです。

『騎士の名誉』あらすじ

風車が出てこないドン・キホーテ。ドン・キホーテは相棒サンチョ・パンサと当てもなく荒野を彷徨っていた。目的が見えず、虚言癖なドン・キホーテに愛想を尽かしたサンチョ・パンサは、ドン・キホーテのもとを立ち去ろうとする…

『セトウツミ』的ドン・キホーテ

『ドン・キホーテ』とはスペインの作家ミゲル・デ・セルバンテスの名作小説だ。小説を読んだことがない人も、風車を巨人だと思い突撃するエピソードは知っていることでしょう。しかしながら、本作は『ドン・キホーテ』の象徴ともいえる風車エピソードを物語から排除した。まさに、ルーなしカレーライスだ。では、アルベルト・セラは本作で何をやってのけたのか?

それは『セトウツミ』だった。

『セトウツミ』とは、此元和津也の人気コミックで、男子高校生が駄弁るだけの作品。大森立嗣の手によって映画化もされている。

本作は『ドン・キホーテ』の世界にカメラがタイムスリップし、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの旅に密着したというような設定で進む。小説や映画の世界とは大違いだ。小説や映画におけるスペクタクルは、長い長い旅のダイジェストである。旅の9割は、食べる、話す、移動するそれだけだ。残念ながら、今回『ドン・キホーテ』の世界に降り立ったアルベルト・セラ一行は、スペクタクルが起きないポイントに来てしまったらしい。そんな取材班の失敗珍道中を観客は共に味わうこととなる。

目の前では、ドン・キホーテの入浴シーン。二人の食事シーン、それも華がないシーンしかない。あまりの虚無さに唖然とするだろう。でもこれが、妙なリズムを生んでだんだん面白くなる。

サンチョ・パンサがドン・キホーテに愛想を尽くし、立ち去る場面。ドン・キホーテは「後悔しても知らないぞ」「バイバイ」というのだが、心細くなって、なんとか彼を引き留めようとするのだ。また、サンチョ・パンさもいざ、独りになると、ドン・キホーテが恋しくなる。この双方のツンデレ具合のリズム感がツボで魅せられていく。そう、何もドラマティックな展開だけが彼らの人生ではない。

しょぼい甲冑を着て剣を構えるが、へなちょこ過ぎてよろけるドン・キホーテや、いつも暇そうに虚空を眺めるサンチョ・パンサから滲み出るユーモアだって立派なスペクタクルではありませんか!アルベルト・セラは、我々に新しい文学映画の世界を開眼させてくれた。体感は少しきついが、なかなか面白い作品でした。

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