【絶賛】『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 後編』全日本人注目ナオトのコミュ力!

ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 後編(2018)

監督:加藤肇
出演:ナオト・インティライミ、世界の人々

※『旅歌ダイアリー2 前編』の感想はこちら

評価:90点

ハッハッハッ、闇夜を少女漫画の1話にありがちな走り方で、それこそ食パンでも加えていたらまさにそのまんま少女漫画な姿でTOHOシネマズ新宿を目指す男がいた。その名はチェ・ブンブン。

Twitterは『キングスマン:ゴールデン・サークル』で祭状態の最中、チェ・ブンブンがスライディング。『未体験ゾーンの映画たち2018予告編大会』の為に空けた午後休をワザワザ常務に返上してまでして駆け込んだ作品はこちら!『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 後編』

シンガーソングライター:ナオト・インティライミの世界旅行ドキュメンタリーシリーズ第二弾の後編だ。

前編はまさかのブンブンシネマランキング2017新作邦画部門で8位

を仕留める快挙を成し遂げた。

では後編はどうだったかというと、、、

『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 後編』概要

シンガーソングライター:ナオト・インティライミが音楽と向き合うために活動を休止し、半年かけてアフリカを中心に世界旅行を敢行。その様子を収めたドキュメンタリーの後編。後編では、セネガル共和国、コートジボワール共和国、マダガスカル共和国、ガーナ共和国、南アフリカ共和国、ルーマニア、ドイツ連邦共和国+アメリカ合衆国(スウェーデン王国でニッケルハルパに挑戦するナオトは時間の関係でカット)での冒険が描かれる…

ナオトは映画の向き合い方を教えてくれる

サイコーであった。

何がサイコーかって?もはや、日本語、英語なんかの壁を破壊し、音楽という言語で会話する一人のアーティストの生き様に私はまたしてもやられた。

音楽のことはよく分からないが、ナオトがインプットと称しアフリカ各地で買い込んだCDを片っ端から聴いていく様子を見ると、映画超人になりかけている私はハッとさせられる。

最近、人生限られた時間を気にし、監督で作品を観ていないか?手垢のついた評判に便乗し、映画を観ていないか?本当に自分の感性、直感で映画を観ていないのでは?と気づかせてくれる。

ナオトと音楽CDの関係性は非常に深い。必ず降り立った地で、CDを買い込む。トランジットで短期滞在したコートジボワール。空港ではCDを売っていない。店員は「CDないわよ!」とナオトを追い返す。しかし、彼は諦めない。清掃員のアンちゃんを捕まえ、粘り強く交渉し、空港の外からお使いで買いに行かせる。買ってきてもらったCDの音楽ジャンルをすかさず彼は訊き、メモをする。もちろん現地語での「ありがとう」も訊き出し、120%お礼の気持ちを伝える。この情熱は画面の外まで伝播し、ディープな音楽ファンでなくても、自分の趣味と向き合わせて、「趣味に対する自分の情熱はどれほどのものか?」と見つめるきっかけを与えてくれる。ブンブンの場合、まさに「映画」であった。

ナオトは「音楽」という言語を操る

本作の核と言える面白さは、ナオトが「音楽」という言語を用いて現地民とSOUL TO SOULのコミュニケーションを図って行く姿にある。

例えば、ナオトがジェンベ(セネガルではジャンベと言わないらしい)を教わるシーン。リズムが難しくなかなかコツが掴めない。しかし、ナオトは諦めることなく、セネガル人とSOUND TO SOUNDのコミュニケーションをとり続ける。そして、友情の証にジェンベまでゲットする姿にドンドン私のボルテージは上がっていく。
またマダガスカルで、ナオトはバリハと呼ばれる竹の楽器を習いに行く。ミュージシャンでも全くもって歯が立たない楽器はあるんだと観客は気づかされる。何時間にも渡り、補講まで受けて習得しようとするが、やはり難しい。しかし、ナオトの表情に悲しみは一切ない。プライド故の苛立ちもない。終いには、講師とのセッションで替え歌まで作ってしまう。軽やかなバリハのメロディーは奏でることができないが、ユーモアで旋律のコミュニケーションを図る姿に脱帽する。

あとは実際に観て欲しい。ナオトが前編以上に、「音楽」というライトセーバーを振り回して無双する姿に熱くなることでしょう。

ナオトは何故ゴレ島に行くことを諦めたのか

これは海外旅行マニアや世界一周をした人でないと分かりにくいシーンなので、解説しておきたい。ナオトはセネガルの世界遺産である「ゴレ島(Île de Gorée)」へ行くことを突然諦める(その代わり、後にガーナの世界遺産「ヴォルタ州、グレーター・アクラ州、セントラル州、ウェスタン州の城塞群」ことケープ・コースト城Cape Coast Castleに行く)。

理由も意志が強いナオトにしては「んーなんとなくゴレ島の気分じゃないんだよなぁー」という理由でゴレ島を断念する。

これは、長期の海外旅行をしていると必ずと言っていいほど訪れる倦怠期というものだ。海外旅行で毎日のように新鮮で未知な出会いをしていくうちに、気持ちが麻痺して、突然有名どころに行きたくなくなる症状だ。私も、フランス留学中、ヨーロッパ各国を回っていたが、段々と一般的な観光スポットに対する興味が失われて行き、風景や人との交流を求めるようになった。その時の気持ちと本作でのナオトの気持ちが非常に似ていた。

ナオト流値切り交渉術

前編ではなかったが、今回ナオト流値切り交渉のシーンがある。1作目では、高い値段を吹っかけられたナオトは、一旦立ち去る素振りを見せて、店員に値切ってもらう技を魅せていたが、今回は逃げることなく、真っ向から値切り交渉を仕掛けていた。

確かに1万円くらいでその楽器は買えるっちゃ買える。しかし、ナオトには適正価格がある。絶対に妥協しない。3000円ぐらいで落とすと決めたナオトは、1000ぐらいからスタートする。当然ながら店員は「ふざけんじゃねぇよ」とあんだけ笑顔だった表情も怒りの顔へと変わっていく。ブンブンのような豆腐メンタルな人だったら、ここで諦めてしまうであろう。

しかし、ナオトは知っている。これは演技なんだと。コミュニケーションの末に真の友情があるのだと。

ナオト「友達のよしみで現地価格で売ってくれよ」
店員「オメェ日本人だろ金持っているんだろ」
ナオト「これが最終価格だ。もしこれでOKならその場で買う。ダメなら…飯行く」
店員「しょうがねぇな…いいよ」
(本当はもっと長く、じっとりとした闘いなのだが、それは劇場でウォッチしてくれ!)

相手をリスペクトしつつも、適正価格に近づけていく匠の所作に「私には無理だー」とひれ伏しました。海外旅行、特にアフリカ圏に行くと値段交渉は当たり前。この交渉は模範的といえよう。

ナオトは二度死ぬ

そして、その交渉術はトンデモナイところで真価を発揮する。ガーナの奴隷博物館前で、ヤバイ集団に取り囲まれるナオトは。何故かカメラは回っている。ナオトが殺されるかもしれないのに。金を払えば助かるところをナオトは一銭も払わないスタンスでこのヤバい集団とディベート対決を始めるのだ。これを読んだ方は、「無理じゃね?」と思うかもしれない。ヴィレッジヴァンガードでよく売られているヤバイ国旅行記では決まって、身ぐるみ剥がされたりしている。

しかし、ナオトは話術だけで無血開城させてしまうのだ!そこでのナオトの切り抜け方は、全日本人に観て欲しい。相手の事情もしっかりと認め、相手ないしガーナへの尊敬の心を表明しつつも1mmたりとも妥協しない。これができたのは、ナオトにガーナに対する強い想いがあったからだ。「YOUは何しにガーナへ?」という問いに対する明確な答えを持っていたのだから。

前作の表面的で上から目線なナオトだったらできなかっただろう。後編でもしっかりナオトの成長を見ることができた。

グローバルコミュニケーショングローバルコミュニケーションと日本は五月蝿く言うが、これぞ本物だと思いました。

最後に…

ネタバレ記事かと思う方も多いかもしれないが、ここに書かれていることは氷山の一角だ。それに、本作は実際に観ないと凄さがわからない作品でもある。沢木耕太郎の「深夜特急」を筆頭に、様々な旅行記が出版され、沢山の旅行マニアが生まれた。ただ、文章だけでは伝わらない等身大の旅行を本作は魅せてくれる。また、ANOTHER SKYや世界の果てまでイッテQなどと言った世界をテーマにしたバラエティ番組とは違って、スタッフはあくまで裏方。ナオト・インティライミの本能的な旅について行っているだけだ。だからカメラワークもブレブレだし、予測できないナオトの行動にカメラマンも焦りっぱなしだ。だからこそ、面白い。ブンブン、ここ1年海外旅行に行っていないがこんなのを魅せられたら、海外行くしか!と思わずにはいられない。

1/5(金)公開の『キングスマン:ゴールデン・サークル』と比べるとFilmarksでのレビュー数が雲泥の差。というよりか、レビューが2件しか上がっていない本作の爆死具合に大草原不可避だ。しかしながら、確信できるのは『旅歌ダイアリー2 後編』は『キングスマン:ゴールデン・サークル』より得るものが多い作品である。金曜日、ギリギリTOHOシネマズ新宿に間に合って本当によかったと感じたブンブンでした。

おまけ:パンフレット

パンフレット買いました。パンフレットにしては950円と割高でした。しかしながら、旅行のガイドブックさながら、各国の情報が書かれ、またナオト・インティライミがそれぞれの国で何をしたのかが書かれているので復習に最適な資料と言えます。

また、本ドキュメンタリーでカットされた国において彼が何をしてきたのかもしっかり書かれており、読み応えは十分でした。パンフレットの造りも独特なので、是非購入することをオススメします。

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