評価

2021映画

【告知あり】『コントラ KONTORA』後ろ向きに歩く男と邂逅する少女ムシェット in JAPAN

学校にも家にも居場所がなく、タバコを吸ったり酒を飲んだり、口答えしたり不良になろうとしているものの周囲はやんわりそれをスルーしてしまい生き地獄を感じている少女ソラ(円井わん)が、亡くなった祖父が遺した宝箱を手に入れる。そこの中には「鉄腕を埋める」というメッセージが書いてあり、彼女は非現実を求めて深淵の森で宝探しを始める。

一方その頃、町では後ろ向きに歩き続けるホームレス(間瀬英正)が出現する。車通りの多い道路をグルグルと回り始めたりと予測不能な動きをする彼に町人はドン引きする。案の定、自転車に轢かれたりするのだが、それでも後ろ向きに歩き続けるのだ。その二人が邂逅した時、物語は思わぬ方向に走り始める。

2021映画

【 #サンクスシアター 11】『ユートピア』インディーズが生んだ逆異世界転生もの

ある日、まみ(松永祐佳)が悪夢から目を覚まと、床に斧のようなものが刺さっている。恐る恐るベッドの上を見ると夢で見た女の子が寝ているではありませんか。むっくり女の子が起きると、何かを伝えようとしているのだが、英語でもない東欧系の謎の言語を話していて全く理解できない。通常、異世界転生ものでは都合よく言語の壁は解消されがちだ。あのリアル路線な「本好きの下克上」ですら、異世界の転生前の世界にない言葉だけ通じない設定にしているくらい言葉の問題は厄介なので御都合主義で処理されてしまう。

サンクスシアター

【 #サンクスシアター 10 】『THE DEPTHS』濱口竜介の深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ

濱口竜介映画の面白いところは、会話劇でありながらも映画的ショットを常に意識しているところにある。『親密さ』における第一部から第二部に切り替わるまでのスムーズな動き、『寝ても覚めても』における冒頭のストーカーシーンにおける距離感と丘の横移動を使った心の距離感をリンクさせていくところに魅力がある。クローズアップ一撃必殺なホン・サンスとは違って、同じ会話劇監督であっても映画史の積み重ねから来る手数の多さ、あるいは発展のさせ方に魅力がある。

サンクスシアター

【 #サンクスシアター 8 】『お嬢ちゃん』美人という仮面に封殺された者

主人公、みのり(萩原みのり)は観光地の甘味処でバイトする美人な大学生。しかしながら、彼女は目の前にある不条理には我慢できず、友人がチンピラに襲われようものならそのチンピラに噛み付く。コンパで、嫌な想いをしているのにそれをひた隠しにしてまたコンパに行こうとしている状況にも物申す。通常でなら、空気の読めない人として人間関係が絶たれて終わるのだが、彼女は「美人」という仮面をつけられているため、どんなに嫌なことを拒もうとしても粘着質に彼女をなだめることでその場に留めようとする。

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【アカデミー賞】『少年の君』アジア映画におけるイジメ描写

『少年の君』は、衝撃的なシーンから始まる。いじめられっ子のフー・シャオディが階段から突き落とされる。校舎から生徒たちがふー・シャオディの姿を見つめる。ある者はスマホでパシャパシャ惨劇を撮る。だが、肝心な死体は観客に提示されない。敢えて提示しないことで、観客の内面にある野次馬根性を引き摺り出す。そして、フー・シャオディの骸に一歩、ニエン(ジョウ・ドンユー)が歩み出ることで、新たな犠牲者を予感させる。