感想

2021映画

【アカデミー賞】『アイダよ、何処へ?』我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか

スルプスカ共和国軍がスレブレニツァに侵攻する。市長(Raymond Thiry)は助けを求めて国連が運営する仮設キャンプにやってきて、Karremans大佐(ヨハン・ヘルデンベルグ)と話をするのだが、大佐はどうも頼りない。人々の危機に対して、大した力になってくれない状況に市長は苛立ちを隠せない。そうこうしているうちに、スレブレニツァは戦場となり数千人の人々が国連キャンプを目指してやってくる。だが、キャンプ場のキャパは足りない。国連軍は、機械的に門を閉鎖して、見渡す限り人、人、人の群がキャンプ周辺を覆い尽くしてしまう。

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【クロアチア映画】『H-8…』クロアチアのうわっ、前から車が!!

マーティン・スコセッシ映画のような、あるいはポール・トーマス・アンダーソン『マグノリア』のような饒舌な語りにまず圧倒される。今やアーロン・ソーキンの爆速脚本術によって、普通にやったら3、4時間かかる内容を2時間に圧縮する技法が確立され、大衆映画でもよく使われる。日本でもアニメでよく爆速饒舌な台詞回しで観客の心を揺さぶる手法が使われる。

クロアチアでは今から半世紀以上も前に既に究極系が出来上がっていた。まず、事件のあらすじが語られる。子連れのトラック運転手とバスの動きが具体的な時間、状況を緻密に積み上げる。ニュース映像に思える具体的な台詞回しはやがてスポーツ実況のような熱気を持ち、早回しで提示される雨天に疾走する二つの車をカットを交差させ激突させる。

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【アカデミー賞】『ファーザー』最恐の殺し文句「ちょっと何言っているか分からない」※ネタバレ考察

アンソニー(アンソニー・ホプキンス)は81歳。愛する娘アンが世話をしてくれている。そんなある日、彼女は「恋人とパリで暮らすの」と語る。ある日、アンソニーは家に見知らぬ男がいることに気づく。彼はアンの夫だと言う。10年以上彼女と暮らしていると語り始めるのだ。違和感を抱くアンソニー、すると彼の周りで怪奇現象が起き始める。チキンを調理していたその男は突然消える。彼だけでなく、もう一人いるはずの娘ルーシーがいない。「パリで暮らす」と言っていたアンが、突然「そんなこと言っていない」と突き放す。家族と楽しく話しているはずが、段々と顔に翳りが出てきて何故か泣き始める。一体何が起こっているのだろうか?

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【MUBI】『The Seventh Walk』アミット・ダッタは絵画の立体機動装置だ

アミット・ダッタは、都会の喧騒とした時間の流れから逃れ、スピリチュアルな音楽と美しさを極めた自然や建築構造の中で絵画の再現を行い、強烈な没入感を与える。その催眠効果の五感に訴える世界は何も考えずとも楽しいものがある。

ただ、よくよく画を見つめているとアミット・ダッタによる巧妙な戦略が見えてくる。Paramjit SinghとGoogleで検索すると、印象派テイストの油絵が沢山出てくる。しかし、映画では木炭画を中心に据えてくる。息を飲むような後光差し込む森林と木炭画の陰影を対比させることで、Paramjit Singhの作品に立体感を与えていく。

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【MUBI】『波紋』セルビア、10年もの呪縛をもたらすタバコ

セルビア人兵士のマルコはボスニア、トレビニェに帰る。婚約者と会うために。マルコは親友のネボイシャと束の間の憩いを求めてカフェに訪れる。途中で小さなタバコ屋に立ち寄り「ドリナ」という銘柄を買った。その直後、タバコ屋に3人の兵士がやってくる。

「『ドリナ』を寄越せ!」

と横暴な態度で店員に話しかける。しかし、「ドリナ」はマルコが買ってしまった。売り切れだ。そのことにキレる兵士。IDを出せと威嚇し、しまいにはリンチを始める。その様子を見ていたマルコは勇敢にも彼らに立ち向かう。