ネタバレ

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【ネタバレ考察】『ゴジラvsコング』から観る拳で語るとは?

2014年から始まったハリウッドゴジラユニバース完結編である『ゴジラvsコング』が遂に映画館で上映された。ゴジラ大国でありながらもいつも通りハリウッド大作の公開が遅い日本では、海外の人のネタバレを踏んでしまいtwitterでは阿鼻驚嘆となっていましたが、皆大味なポップコーン映画に飢えていたのか、公開されるや否やお祭り状態となっている。当然ながら私もその一人。直接的なネタバレこそ踏まなかったものの、なんとなくツイートで察してしまった悲しい人です。でもこの映画だけは映画館で観ようと待ちました。そして大正解でした。監督は『ブレア・ウィッチ』やNetflix版『DEATH NOTE/デスノート』といった衝撃的なポンコツリメイクを放った悪名高きアダム・ウィンガード。数年前から警戒していたのですが、これが実に素晴らしかった。

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【ネタバレ】『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』上から来るぞ!気をつけろ!

高岡早紀主演で2019年10月に「リカ」、21年3月に前日譚「リカ リバース」が放送されたドラマシリーズの劇場版。五十嵐貴久のサイコスリラー小説「リカ」シリーズを原作に、19年版ドラマ最終回のその後が描かれる。山中でスーツケースに入った本間隆雄の死体が発見された。本間は3年前に逃走犯の雨宮リカに拉致され行方不明になっていた。警視庁捜査一課の奥山次郎は、潜伏中のリカをおびき寄せるため、偽名を使ってマッチングアプリでリカを探し出すことに成功するが、次第にリカにのめり込んでいく。奥山の婚約者でリカを追う警察官の青木孝子は、捜査に平行し、リカにのめり込んでいく奥山を心配し、先輩の梅本尚美とともに奥山の部屋へと向かうが……。リカ役を高岡が演じるほか、奥山役を市原隼人、青木役を内田理央、梅本役を佐々木希がそれぞれ演じる。

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【ネタバレ考察】『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』メルヴィル、ザラーにならないように、うっかり殺めないように

暴力は突発的に起きる。突発的な暴力に支配された世界では、殺しは静かにやってくる。冒頭、夜の繁華街で襲われる女。すると突然、暴力漢の脳天が撃ち抜かれる。場面は切り替わり、公園でヤクザのような人が犬を連れて話していると、これもいきなり突然死する。車では、怯える女を連れて男が車を走らせようとすると、何者かに首を掻っ切られる。そのまま激しいカーレースとなり、岡田准一演じるファブルはトム・クルーズさながらの曲芸を魅せつける。息を呑むようなアクションはハリウッド大作を観ている気分にさせられ、これだけでこの映画の勝利は確約されている。このドライで、大胆かつ厳格なショット捌き、語りではなくアクションで映画を語ろうとする職人芸はジャン=ピエール・メルヴィル、S・クレイグ・ザラーを彷彿とさせる。

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【ネタバレ考察】『ヒノマルソウル』から観るプロパガンダ映画論、或いは想像したくない東京五輪

まず、1994年リレハンメルオリンピックでの場面。街中のディスプレイ前に群衆が集まる。その中で、原田雅彦(濱津隆之)は痛恨のミスで金メダルを逃す。群衆が、一斉にヤジを飛ばす。記者会見のシーンでは、必死に震えを押さえ込み苦笑いする原田に記者が圧をかける。このシークエンスにより、金メダル獲得がいかに日本にとって重要かが観る者に刷り込まれる。そして数分に一度「金メダル」という単語が発せられ、いく先々で金メダルが取れないことによる呪いを向けられる。この積み重ねにより、終盤誕生するパワーワード「ヒノマルソウル」に熱が宿る。

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【ネタバレ考察】『映画大好きポンポさん』映画とは時間のエンターテイメントだ!

杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化。大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんのもとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン。映画を撮ることに憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりの楽しさを知る。ある日、ジーンはポンポさんから新作映画「MEISTER」の脚本を渡される。伝説の俳優マーティンの復帰作でもあるその映画に監督として指名されたのは、なんとジーンだった。ポンポさんの目にとまった新人女優ナタリーをヒロインに迎え、波乱万丈の撮影がスタートするが……。「渇き。」の清水尋也が主人公ジーン役で声優に初挑戦。新人女優ナタリーを「犬鳴村」の大谷凜香、ポンポさんをテレビアニメ「スター☆トゥインクルプリキュア」の声優・小原好美がそれぞれ演じる。監督・脚本は「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」「劇場版『空の境界』第五章 矛盾螺旋」の平尾隆之。

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【ネタバレ考察】『アメリカン・ユートピア』デイヴィッド・バーン時の神殿

バークリーショットで机に座るデイヴィッド・バーンが映し出される。バークリーショットといえば、今やミュージカル映画のクリシェであり、多くの映画が盲目的に丸を形成するのだが、本作では中心に四角い机を配備し、視点の中心にプラスチックの脳みそが見えるように画を作り込んでいる。

1曲目は”Here”だ。鎖が光とともに迫り上がる。

「ここは情報が詰まっている領域」
「ここは滅多に使われない領域」

と脳みその部分を示しながら講義が始まる。脳内の自分の居場所を探す旅が提示され、このパフォーマンスの芯の一部が提示される。

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【ネタバレ酷評】『茜色に焼かれる』激情に不幸を過剰積載していく日本閉塞感ものの最終兵器

夫(オダギリジョー)が交通事故で亡くなるものの、謝罪なしに政治的にもみ消されて早七年のところから始まる。そこから展開されるのは、新型コロナウイルスによってカフェが廃業となり、妻・田中良子(尾野真千子)は量販店で花を売りながらマネージャーにパワハラされ、風俗店でも客から暴言を吐かれながら日銭を稼いでいる。息子・純平(和田庵)は学校で先輩にイジメられている。