感想

2021映画

【 #死ぬまでに観たい映画1001本 】『ロジャー&ミー』ライン工タコ・ベルでアルバイト

「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のマイケル・ムーアドキュメンタリー『ロジャー&ミー』を観た。マイケル・ムーアの故郷フリントでゼネラル・モーターズが工場を閉鎖することが決まり、そこに残された人の苦悩を捉えたドキュメンタリーだ。マイケル・ムーアのドキュメンタリーは時事的なものが多いので数十年前の話を今観てもピンとこないのではと不安を抱いていたのでしたが、杞憂であった。

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【ネタバレ考察】『ディア・エヴァン・ハンセン』ウォールフラワーの心臓を抉り取れ!

第34回東京国際映画祭で上映された『ディア・エヴァン・ハンセン』が日本でも公開された。本作は、トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いた同名ブロードウェイミュージカルの映画化である。監督は『RENT レント』の脚本や『ウォールフラワー』、『ワンダー 君は太陽』といった青春映画の監督を務めたスティーヴン・チョボスキー。海外では評判悪いと聞いていたのだが、それも納得であった。というよりか、そもそも本作は「泣けるミュージカル」ではなかったのだ。今回は、『ディア・エヴァン・ハンセン』が修羅場映画としていかに傑作だったかについてネタバレありで書いていく。

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ジャック・リヴェット『ジャンヌ』2部作:男装という鎧

ブリュノ・デュモンのジャンヌ・ダルク映画『ジャネット』、『ジャンヌ』公開に併せ、ジャック・リヴェットの『ジャンヌ/愛と自由の天使』、『ジャンヌ/薔薇の十字架』を観た。ジャンヌ・ダルク最期の地であるルーアンで生まれたジャック・リヴェットは、長編デビュー作『パリはわれらのもの』でシャルル・ペギーの「Paris n’appartient à personne(パリは誰のものでもない)」という言葉を引用していることから、彼がジャンヌ・ダルク映画を撮ることは宿命だったといえる。ジャンヌ・ダルクは、ジョルジュ・メリエスに始まり、カール・テオドア・ドライヤー、ロベール・ブレッソン、リュック・ベッソンと様々な監督によって映画化されてきた。ジャック・リヴェットが放ったジャンヌ・ダルク映画は、神聖化された彼女を民話に落とし込むことによって普遍的な男性に抑圧される女性像を告発したものであった。

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【特集ブリュノ・デュモン】『カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇』自分はきっと正常である

『FRANCE』以外のブリュノ・デュモン映画として残っていた『カミーユ・クローデル ある天才彫刻家の悲劇』を観ました。カミーユ・クローデルといえば、オーギュスト・ロダンの愛人というイメージがあるが、本作はロダンと彼女、そしてローズとの三角関係ではなく、心の支えを失い統合失調症に陥った彼女の精神病院での生活を追った作品である。これが問題作であった。

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【特集ブリュノ・デュモン】『フランドル』地続きにある死と生

ブリュノ・デュモンが第59回カンヌ国際映画祭に出品しグランプリを受賞した『フランドル』を観ました。第59回カンヌ国際映画祭は激戦区となっており、『パンズ・ラビリンス』、『ファーストフード・ネイション』、『Climates/うつろいの季節』、『街のあかり』、『ボルベール〈帰郷〉』などと強豪が多い中、ミニマルな戦争映画である『フランドル』がグランプリ獲ったのは驚きである(パルムドールはケン・ローチ『麦の穂をゆらす風』)。DVDのパッケージからは激しい戦闘シーンを想起させるが、案の定ブリュノ・デュモン印に満ちた映画であった。

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【特集ブリュノ・デュモン】『アウトサイド・サタン』神の救いは悪魔の蜜

私が敬愛する監督ブリュノ・デュモン。ありがたいことに、ブリュノ・デュモンについて書く機会をいただいたので、今月はブリュノ・デュモン未見映画を観ることにした。2011年カイエ・デュ・シネマ年間ベストにて4位に輝いた『アウトサイド・サタン』に挑戦しました。これが私のオールタイムベスト級に大傑作でした。

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『MISS VIOLENCE』ギリシャの奇妙な波

2000年代後半からギリシャで同時多発的に生み出された、ミニマムで不穏な空気に政治や社会問題を封じ込めた作品群を海外の批評家はGreek Weird Waveと呼んでいる。日本ではヨルゴス・ランティモスの作品や『PITY ある不幸な男』がその流れにあると捉えてもらえればイメージしやすいだろう。

今回は国際的にGreek Weird Waveが注目されるきっかけの一つとなった『MISS VIOLENCE』を観賞しました。本作は、第70回ヴェネツィア国際映画祭にて監督賞(アレクサンドロス・アブラナス)と男優賞(テミス・パヌ)を受賞しました。日本ではほとんど紹介されることのなかった作品ですが、ヨルゴス・ランティモス映画好き必観の作品に仕上がっていました。