【ネタバレ】『サマーフィルムにのって』高解像度の時代劇/低解像度の青春キラキラ映画
映画仲間が2020年のベスト映画に挙げていた青春映画『サマーフィルムにのって』を観てきました。映画を作る方の「映像研には手を出すな!」としてかなり期待していたのですが、正直問題が多い映画でした。
映画仲間が2020年のベスト映画に挙げていた青春映画『サマーフィルムにのって』を観てきました。映画を作る方の「映像研には手を出すな!」としてかなり期待していたのですが、正直問題が多い映画でした。
Twitterでクレヨンしんちゃんの新作がやたらと評判が高い。ヴィジュアル的に、大晦日にやる「笑ってはいけない」シリーズの様な雰囲気がバリバリに染み出していて傑作という雰囲気ではないのだが、絶賛一色に染まっている。監督を確認したら、今回は髙橋渉監督回だった。なるほど傑作な訳だ。彼は、監督デビュー作『劇場版3D あたしンち 情熱のちょ~超能力♪ 母 大暴走!』でシンエイ動画が欲を出して不要と思われるアニメなのに、3D演出を盛り込んだせいで上映時間が43分とテレビ放送2回分レベルの尺となってしまう大惨事の中で、才能を得た者が承認欲求を満たせなかった際に如何にして暴走するかを映画の中で描いた。その後、『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』で胸熱ヒーロー映画としてクレヨンしんちゃんを盛り上げた熱い歴史を持つ監督である。そんな彼の新作を観にいったのですが、これが凄まじい。子ども映画でありながら経済学、政治学について切り込み、トーマス・バッハの様なバケモノや日本の汚職が何故生まれるのかを「尻」でもって風刺してみせた。本記事ではネタバレありで『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』について書いていく。
さて、細田守映画は毎回賛否が別れることで有名だ。大衆向けのヴィジュアルが特徴的で、その特徴から金曜ロードショーで放送されることも少なくない。だが、よくよく映画を観ると倫理的にぶっ飛んでいる部分が多い。『おおかみこどもの雨と雪』は狼との間に子どもを授かってしまった母の育児が描かれるのだが、病院等に相談せず、片田舎女手一つで子どもを育てようとする男性の女性に対する楽観視が問題となった。『バケモノの子』では異世界転生したため、住民登録が不備となっている男が現実世界でたらい回しに遭う様子が描かれている。『未来のミライ』では、主人公のくんちゃんがお尻に異物を入れて欲情する謎の場面が挿入されている。このような異常展開は時たま議論の棚に持ち上げられ賛否両論となる。ただ、これはアニメである。観客を共犯関係に引き摺り込み、倫理を超えたその先を魅せるのがアニメないし映画の役割の一つではないだろうか?そして、その共犯関係になれるかなれないかが細田守映画を絶賛するか酷評するかの境目となっていると考えることができる。私は、『おおかみこどもの雨と雪』は倫理的な部分で大嫌いだったのですが、『未来のミライ』は大好きである。今回、ぶっ飛んだ映画と噂される『竜とそばかすの姫』を観たのですが、確かに狂っていた。細田守はこの映画を作るために、今までの作品が存在したのかと思うほどに集大成だった。というわけでネタバレありで考察していく。
100日間生きたワニ(2021) 監督:上田慎一郎、ふくだみゆき出演:神木隆之介、中村倫也(中村友也)、木村昴、新木優子、池谷のぶえ、杉田智和、ファーストサマーウイカ、清水くるみ、山田裕貴etc 評価:40点 おはようご…
ピノキオ(1940)Pinocchio 監督:ベン・シャープスティーン、ハミルトン・ラスク出演:メル・ブランク、ドン・ブローディー、ウォルター・キャトレット、マリオン・ダーリントン、フランキー・ダロ、クリフ・エドワード、…
2014年から始まったハリウッドゴジラユニバース完結編である『ゴジラvsコング』が遂に映画館で上映された。ゴジラ大国でありながらもいつも通りハリウッド大作の公開が遅い日本では、海外の人のネタバレを踏んでしまいtwitterでは阿鼻驚嘆となっていましたが、皆大味なポップコーン映画に飢えていたのか、公開されるや否やお祭り状態となっている。当然ながら私もその一人。直接的なネタバレこそ踏まなかったものの、なんとなくツイートで察してしまった悲しい人です。でもこの映画だけは映画館で観ようと待ちました。そして大正解でした。監督は『ブレア・ウィッチ』やNetflix版『DEATH NOTE/デスノート』といった衝撃的なポンコツリメイクを放った悪名高きアダム・ウィンガード。数年前から警戒していたのですが、これが実に素晴らしかった。
漁港の肉子ちゃん(2021) 監督:渡辺歩出演:大竹しのぶ、Cocomi、花江夏樹、中村育二、石井いづみ、⼭⻄惇、八十田勇一、下野紘、マツコ・デラックス、吉岡里帆etc 評価:20点 おはようございます、チェ・ブンブンで…
高岡早紀主演で2019年10月に「リカ」、21年3月に前日譚「リカ リバース」が放送されたドラマシリーズの劇場版。五十嵐貴久のサイコスリラー小説「リカ」シリーズを原作に、19年版ドラマ最終回のその後が描かれる。山中でスーツケースに入った本間隆雄の死体が発見された。本間は3年前に逃走犯の雨宮リカに拉致され行方不明になっていた。警視庁捜査一課の奥山次郎は、潜伏中のリカをおびき寄せるため、偽名を使ってマッチングアプリでリカを探し出すことに成功するが、次第にリカにのめり込んでいく。奥山の婚約者でリカを追う警察官の青木孝子は、捜査に平行し、リカにのめり込んでいく奥山を心配し、先輩の梅本尚美とともに奥山の部屋へと向かうが……。リカ役を高岡が演じるほか、奥山役を市原隼人、青木役を内田理央、梅本役を佐々木希がそれぞれ演じる。
暴力は突発的に起きる。突発的な暴力に支配された世界では、殺しは静かにやってくる。冒頭、夜の繁華街で襲われる女。すると突然、暴力漢の脳天が撃ち抜かれる。場面は切り替わり、公園でヤクザのような人が犬を連れて話していると、これもいきなり突然死する。車では、怯える女を連れて男が車を走らせようとすると、何者かに首を掻っ切られる。そのまま激しいカーレースとなり、岡田准一演じるファブルはトム・クルーズさながらの曲芸を魅せつける。息を呑むようなアクションはハリウッド大作を観ている気分にさせられ、これだけでこの映画の勝利は確約されている。このドライで、大胆かつ厳格なショット捌き、語りではなくアクションで映画を語ろうとする職人芸はジャン=ピエール・メルヴィル、S・クレイグ・ザラーを彷彿とさせる。
まず、1994年リレハンメルオリンピックでの場面。街中のディスプレイ前に群衆が集まる。その中で、原田雅彦(濱津隆之)は痛恨のミスで金メダルを逃す。群衆が、一斉にヤジを飛ばす。記者会見のシーンでは、必死に震えを押さえ込み苦笑いする原田に記者が圧をかける。このシークエンスにより、金メダル獲得がいかに日本にとって重要かが観る者に刷り込まれる。そして数分に一度「金メダル」という単語が発せられ、いく先々で金メダルが取れないことによる呪いを向けられる。この積み重ねにより、終盤誕生するパワーワード「ヒノマルソウル」に熱が宿る。