2021映画

『レニ』逃げ場がない人間の行動心理

東京五輪ですね。よくあるギャングスタ映画の栄枯盛衰を観るかのごとく、日に日にフィクションを超えた崩壊っぷりを魅せている。開会式で楽曲制作を担当したミュージシャンの小山田圭吾が過去に雑誌のインタビューでイジメについて告白していたことが明らかとなり、大炎上し開会式数日前に辞任を表明する事態となっている。さて、アーティストが過去の罪を払拭できるのか?といった問題を考えた時に、レニ・リーフェンシュタールのことが頭に浮かぶ。彼女はナチスドイツに見出され、ヒトラーの右腕監督としてプロパガンダ映画を制作した。実質無限ともいえる潤沢な予算を使って、全国党大会を収めた『意志の勝利』や1936年ベルリンオリンピックを撮った『オリンピア』を製作した。後者は、様々な技巧を凝らし映画史に残る傑作となった。しかし、ナチスドイツのプロパガンダに協力したということで長年、社会に罪を追及され映画が撮れなくなってしまった。さて、晩年の彼女にインタビューした映画『レニ』がある。第69回キネマ旬報ベスト・テンにも選出された作品であるが、数年前までは渋谷TSUTAYAにVHSがあるくらいで観る手段がなかった。

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【ラヴ・ディアス】『停止/THE HALT』この時、誰も知らなかった。パンデミックによる虚無の時が延々と続く世界が来ることに

シネフィル向けサブスクリプションサービスMUBIにおいて日本は冷遇されがちだ。もちろん、権利の関係もありますが、ケリー・ライカートの『First Cow』などといった目玉作品は大抵日本配信されません。海外のMUBIを覗くと、『ファイト・クラブ』のようなメジャー作品もあるのですが、こうした作品もとことん除外されるので、日本版MUBIは謎のスリランカ映画やレバノン映画が立ち並ぶエクストリームなサービスとなっている。そんなMUBIですがカンヌ国際映画祭特集の一環としてラヴ・ディアスの4時間越え作品『停止』が配信されました。日本では、数年前の東京国際映画祭で上映されたのですが、平日だった為、サラリーマンである私は観に行くことができませんでした。最近、イメージフォーラムがこの手の超長尺映画を果敢に上映してくれるのですが、ラヴ・ディアスに至ってはハードルが高過ぎて『立ち去った女』以外はまともに公開されていない。そしてラヴ・ディアス作品はMUBIが配信しなかった場合、観賞難易度が一気に上がる。というわけでMUBIにやってきた時、とても嬉しかった。

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【踊らないインド映画】『ジャッリカットゥ 牛の怒り』牛の怒りというよりかは牛のドン引きだよね

2021年は踊らないインド映画を研究対象にしている。友人から、「第30回アジアフォーカス・福岡国際映画祭に面白そうな踊らないインド映画があるよ。」とオススメされたのが『ジャッリカットゥ 牛の怒り』であった。その時は日本公開されなさそうなアクション映画だなぐらいにしか思っていなかったのですが、あのイメージフォーラムことダゲレオ出版配給で日本公開が決まりました。予告編を観ただけで戦慄すら覚える魔界。海外旅行ができない今だからこそ、楽しめるのではと私はこの魔界に足を踏み入れました。

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【ネタバレ考察】『竜とそばかすの姫』仮面の告白

さて、細田守映画は毎回賛否が別れることで有名だ。大衆向けのヴィジュアルが特徴的で、その特徴から金曜ロードショーで放送されることも少なくない。だが、よくよく映画を観ると倫理的にぶっ飛んでいる部分が多い。『おおかみこどもの雨と雪』は狼との間に子どもを授かってしまった母の育児が描かれるのだが、病院等に相談せず、片田舎女手一つで子どもを育てようとする男性の女性に対する楽観視が問題となった。『バケモノの子』では異世界転生したため、住民登録が不備となっている男が現実世界でたらい回しに遭う様子が描かれている。『未来のミライ』では、主人公のくんちゃんがお尻に異物を入れて欲情する謎の場面が挿入されている。このような異常展開は時たま議論の棚に持ち上げられ賛否両論となる。ただ、これはアニメである。観客を共犯関係に引き摺り込み、倫理を超えたその先を魅せるのがアニメないし映画の役割の一つではないだろうか?そして、その共犯関係になれるかなれないかが細田守映画を絶賛するか酷評するかの境目となっていると考えることができる。私は、『おおかみこどもの雨と雪』は倫理的な部分で大嫌いだったのですが、『未来のミライ』は大好きである。今回、ぶっ飛んだ映画と噂される『竜とそばかすの姫』を観たのですが、確かに狂っていた。細田守はこの映画を作るために、今までの作品が存在したのかと思うほどに集大成だった。というわけでネタバレありで考察していく。