2021映画

【ネタバレ考察】『ティングラー/背すじに潜む恐怖』ウィリアム・キャッスルWho Are You?

ウィリアム・キャッスルが「世にも奇妙な物語」のタモリのように登場して、「叫びはショックを軽減させる。だから時が来たら叫ぶのです。ビリビリとしたものが来るかもしれない。そうしたら叫ぶのです。」と語る。実は、本作は劇場の一部が電気椅子となっており、怪物ティングラーが現れると電気ショックが発生するのだ。そして観客に叫ばせることでチープな怪物ティングラーに魅力を与えようと試みている。

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【 #サンクスシアター 15】『5windows eb(is)』リベラシオンを読みながらポッキーをパクパクする女

『5windows』から4年後、恵比寿映像祭において制作した『5windows』の恵比寿編。恵比寿ガーデンプレイスのセンター広場などでインスタレーションとして展示された「5windows eb」「5windows is」の二つの作品を再編集したもの。東京、恵比寿で、中村ゆりかと染谷将太とともに、また別の物語を描く。

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『私、オルガ・ヘプナロヴァー』抑圧を抑圧のまま殴る、そして開き直る

1973年、オルガ・ヘプナロヴァ(22)はプラハで路面電車を待つ人々にトラックを衝突させ、12人が負傷、8人が死亡する大惨事となった。彼女には死刑宣告がくだり、チェコ史最後の死刑囚となった。そんな彼女が何故、トラックで大量殺戮を行ったのか?それをこの映画は描いていく。

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【カンヌ国際映画祭特集】『After Love』&『The White Knights』ヨアヒム・ラフォスってこんなに酷いの?

第74回カンヌ国際映画祭のシーズンがやってきました。コンペティション部門のラインナップをみていると、見慣れない名前の監督の存在に気がつきました。ヨアヒム・ラフォス(Joachim Lafosse)はベルギー出身の映画監督です。オティニー=ルヴァン=ラ=ヌーヴにあるInstitut des Arts de Difusionで学んだ後、2004年に初長編Folie Privéeを撮る。本作は、離婚するにあたって息子の所在をどうするのか悩む話であり、後の『After Love』に通じる物語となっている。2012年に発表した『Our Children』で5人も子どもを殺害した女を巡る物語を描き、主演のエミリー・ドゥケンヌが第65回カンヌ国際映画祭ある視点部門で女優賞を受賞した。

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【カンヌ国際映画祭特集】『ハデウェイヒ』敬虔と社会不適合者

修道女志望のCéline van Hadewijchは、勉強していた修道院を出るように言われ、パリの両親の家に戻った。セリーヌは10代のイスラム教徒の友人ヤシーヌ・チクとカフェで出会い、一緒に過ごすようになる。Célineは、自分は神に誓っているし、自分の体は神のものだから処女のままだと、彼はただの友達だと言う。YassineはCélineに兄で宗教家のNassir Chikhを紹介し、10代の少女を彼の宗教セミナーに参加するように誘う。しかし、Nassirの正体はテロリストであり、混乱しているCélineは彼の組織にとって完璧な道具であった。

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【ネタバレ考察】『映画大好きポンポさん』映画とは時間のエンターテイメントだ!

杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックを劇場アニメ化。大物映画プロデューサーの孫で自身もその才能を受け継いだポンポさんのもとで、製作アシスタントを務める映画通の青年ジーン。映画を撮ることに憧れながらも自分には無理だと諦めかけていたが、ポンポさんに15秒CMの制作を任され、映画づくりの楽しさを知る。ある日、ジーンはポンポさんから新作映画「MEISTER」の脚本を渡される。伝説の俳優マーティンの復帰作でもあるその映画に監督として指名されたのは、なんとジーンだった。ポンポさんの目にとまった新人女優ナタリーをヒロインに迎え、波乱万丈の撮影がスタートするが……。「渇き。」の清水尋也が主人公ジーン役で声優に初挑戦。新人女優ナタリーを「犬鳴村」の大谷凜香、ポンポさんをテレビアニメ「スター☆トゥインクルプリキュア」の声優・小原好美がそれぞれ演じる。監督・脚本は「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」「劇場版『空の境界』第五章 矛盾螺旋」の平尾隆之。

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『唐人街探偵 東京MISSION』メガ密のユートピア/分断される世界への処方箋

チン・フォン(リウ・ハオラン)&タン・レン(ワン・バオチャン)が日本へ降り立つ。飛行機内でドカ食いをした為、ゲリラゲリに襲われるタン・レンだったが、息をつく間もなく、妻夫木聡演じる野田昊が出現し、そのまま群れのアクションが展開される。一見、通俗ながらもこのアクション一つから滲み出るジョン・フォードの趣に感銘を受ける。総勢72名ものアジア人が彼らめがけて突進してくると思いきや、彼らそっちのけで大乱闘を繰り広げる。リュックを背負ったヲタクと思われる人はゼエゼエ言いながら階段を駆け上がり、飛び蹴りする男たちの狭間の中で、ゴミ箱を被せられた男は階段から落ちてゆく。赤のキャビンアテンダントと紺のキャビンアテンダントが階段で殴り合いをする中、飄々と闊歩する野田。「ウェルカム・トゥ・トーキョー」と観客もろとも不思議の国ニッポンへ引きづりこまれるのであります。違和感しかないトーキョー描写がメガ密空間で描かれるのだが、まさしく『静かなる男』の均等かつ繊細に押並べられていく個性の連動、群れの躍動感にノックアウトされていき、「日本っていいな」と説得されていってしまう。