2021映画

2021映画

【クルド映画祭】『希望』ユルマズ・ギュネイの傑作はこっちだ!

市井の人々が映し出される。ある男が新聞を持っている男のところへ歩み寄り、「番号を見てくれ」と言う。男はダルそうに、新聞の番号と紙切れを照らし合わせる。必死な顔で結果を気にするこの男は、宝くじに全ての希望を託しているのだ。彼は貧しい。唯一の商売道具である馬も草臥れている。そんな彼の住処である貧困街にカメラは注目する。ネオリアリズモ作品を彷彿とする廃墟のような空間と群れがおりなす人間味が滲み出てくる。自転車を奪われる少年。家事に励む女が映し出される中、この宝くじ男の悲惨な生き様が紡がれていく。彼は、折角の商売道具を交通事故で失い、貧窮に貧困を重ねてしまう。

2021映画

『三月のライオン』将棋は指さないが、画は刺す

『三月のライオン』はカルト的人気を博するのも納得だ。全ショットが完璧であり、映画とは「画」で語るものだと観客に殴りつけてくる。由良宜子演じるアイスは、記憶喪失のハルオ(趙方豪)を連れ出す。社会というしがらみから逃れるように自由に生きるアイスにとって、ハルオ以外は空気のような存在だ。街中でパンツを脱ごうとも気にはしない。そんな、自由の快楽に溺れている彼女の誘惑に引き込まれて行くハルオだが、彼は「社会」という重力に引っ張られて工事現場の仕事につく。

2021映画

【Netflix】『AIに潜む偏見: 人工知能における公平とは』複製された偏見

MITメディア・ラボで学ぶジョイ・ブオラムウィーニはSFから着想を得て作品制作を行う課題に顔認証技術を採用する。しかし、黒人である彼女の顔は中々認識してくれない。調査をする中で、女性よりも男性、有色人種よりも白人の方がAIは認識しやすい事実に辿り着く。肌の色が違うぐらいなら物理法則に当てはめれば容易に認識してくれそうなものなのにどうしたことか?ここから彼女の探求の旅は始まる。その中で様々な研究者がAIに潜む偏見の存在に気づきはじめていることを知る。AIは膨大な情報を解析するだけだ。その情報が誤っていれば、誤った結果が出力される。これは意図しないところで起きたりするのだ。

2021映画

『犬は歌わない』生類憐れみの令は反射する

ライカは生存の保証がないまま宇宙に飛ばされ、地球史上初めて地球を周回した動物になった。映画は、そのライカの魂が今のロシアの犬たちに引き継がれているかのようにロシアの野良犬の生活が映し出される。本作はソ連の宇宙開発に関するドキュメンタリーとしてみると肩透かしを食らうことでしょう。