『Glowing Eyes』ハッテン場の日常

Glowing Eyes(2002)
La chatte à deux têtes

監督:ジャック・ノロ
出演:Vittoria Scognamiglio、ジャック・ノロ、ライオネル・ゴールドスタイン、アルバン・バイラクタライ、ジャメル・バレクetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近、アニメ作品「ヤニねこ」が諦観コンテンツとして矢面に立たされているのだが、アート映画/カルト映画の世界では定期的にこの手の作品は作られている。ようは社会にある大きな物語とは切り離され、小さな領域の中での他愛もないコミュニティ。志は低く、クズでどうしようもない関りなのだが、見向きもされないような日常を切り取ることで影日向に佇む者へ光を当てる。確かにそれは、変えられない社会に対する諦観たる態度ともいえリベラルの中には目くじらを立てる者はいるだろうが、個人的にはそういった視点の作品は必要であると考えている。

さて、日仏学院のメディアテークでジャック・ノロ『La chatte à deux têtes』を発見した。ジャック・ノロの作品はカイエ・デュ・シネマやジョン・ウォーターズが好んでいる一方で、日本ではほとんど知られていない監督である。今回、鑑賞した『La chatte à deux têtes』はフランスのハッテン場になっているピンク映画館の日常を描いた作品である。

『Glowing Eyes』あらすじ

Une nuit dans un cinéma porno. Les rituels des spectateurs sont minutieusement dépeints pour révéler la mécanique du lieu sans épargner le sexe explicite ou la réflexion sur la situation actuelle de la vie gay parisienne.
訳:ポルノ映画館でのある夜。観客の振る舞いや儀式が丹念に描かれ、その場の仕組みが浮き彫りにされる。そこでは、露骨な性描写や、パリにおけるゲイの生活の現状についての考察も、決して避けることなく描き出されている。

IMDbより引用

ハッテン場の日常

冒頭、映画館からゲイが身体をクネクネさせながら出てくる。そして、本作のタイトルにもなっている《La chatte à deux têtes》のポスターをまじまじと眺めていると、おっさんが入店する。ゲイはその後を至近距離でついていく。おっさんは座席をライターで照らす。これは現代でいうところの暗いスクリーンをスマホの光で照らす行為なのだろうか。それともハッテンの合図なのだろうか。意外なことにふたりは結びつかず、ゲイは劇場を徘徊していく。本作はセリフを抑えながら、身体的動きを静かに捉えることによって繊細、時に大胆な行為を見つめていく。

その中にはユニークなショットが存在する。チケット売りの女性が、劇場前でたむろするハトを追い払おうとする。箒で掃除をするのだが、その振り返りの背中をなぞるように客がやって来る。客は金を払いたそうにしているのだが、彼女は一切気づかない。接客業あるあるだが、店員の視野が狭すぎて客が認知されない決定的瞬間が映し出されているのだ。

そして、映画は劇場前に座り込み、ガン決まっている若者、そして劇場内で老若男女、美も醜も関係なく、欲望のまま、時に映画や劇場空間に集中する者たちへ賛美を手向ける。そう、このハッテン場は自由なんだと。マイノリティがマイノリティであれる場所だとジャック・ノロは語るのだ。