『赤頭巾ちゃん気をつけて』イキり受験生の憂鬱

赤頭巾ちゃん気をつけて(1970)

監督:森谷司郎
出演:岡田裕介、森和代etc

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、芥川賞作家・庄司薫の訃報を知ったので再観してみた。本作は高校時代に一度観ているのだが、あの頃は言葉遣いが独特でついていけなかった印象がある。半世紀前のインテリ高校生のボキャブラリーは、現代の衒学的言葉遣いを特徴とした作品とは異なる空気感がありいまいちピンと来なかったのだ。再鑑賞してみると少し観えてくるものがあった。

『赤頭巾ちゃん気をつけて』あらすじ

この日、薫クンはまったくついていなかった。東大入試は中止になり、ホンコン風邪をひき、スキーにけつまずいて足の爪をはがし、愛犬が死んだ。薫クンは幼なじみの由美に電話する。テニスの約束を断わらねばならない。由美は薫クンとおない年の、キュートでちょっとこなまいきな女の子だ。この日も、きのう読んだばかりの「エンペドクレスのサンダル」の話を電話に出るなりまくしたてる。薫クンがすでにその話を知っていることを知った由美は「舌かんで死んじゃいたい」と電話を切った。これでまた一週間は絶交だろう。病院に行くと、兄の幼なじみの女医さんが手当てしてくれた。その豊かな肉体に対する性のうずき。薫の妄想は頂点に達する。

映画.comより引用

イキり受験生の憂鬱

本作は文芸映画でありながらも、映画の特性を活用した実験的演出が魅力的となっている。冒頭で、東大の学園闘争のシーンと重ねるようにスキーのストックで爪を剥すほどのケガをする様子、犬が倒れるショットをスタイリッシュに織り交ぜていく。東大入試が中止となり、宙吊りの状態となった薫クンはそれなりのインテリではあるもの、コミュニティに完全に所属できないモヤモヤが揺蕩っている。女と電話をすれども、いきなりエンペドクレスの話をされるし、大人についていくも会話の蚊帳の外に追いやられ、ヘラヘラ愛想笑いするしかない。近所のおばちゃんと雑談になれども自分の傷に塩を塗られるような感じだ。こういった絶妙なヒリツク感触を早回しや白黒といったイメージによる演出で描いているので興味深く観た。また、原作はサリンジャーからの援用が指摘されるのだが、確かに後半の場面は「ライ麦畑でつかまえて」そのものだったなと感じた。