『LOST LAND/ロストランド』ロヒンギャ問題を知る

LOST LAND/ロストランド(2025)

監督:藤元明緒
出演:ムハマド・ショフィック・リア・フッディン、ソミーラ・リア・フッディンetc

評価:85点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

2025年のヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門にて日本人初の審査員特別賞を受賞して以降、国際映画祭で無双している藤元明緒監督最新作『LOST LAND/ロストランド』が公開されたので夜勤明けにヒューマントラストシネマ有楽町へ足を運んできた。

『LOST LAND/ロストランド』あらすじ

「僕の帰る場所」「海辺の彼女たち」で国内外から注目を集めてきた藤元明緒監督が、「世界で最も迫害されている民族のひとつ」と言われるロヒンギャの証言をもとに、故郷を追われた難民の幼い姉弟が家族との再会を求め命懸けで国境を越える姿を描いたロードムービー。容赦ない現実と幻想的な表現が入り混じる世界観で、難民たちの過酷な密航の旅路を子どもの視点から映し出す。

難民キャンプで暮らす5歳のシャフィと9歳の姉ソミーラは家族との再会を願い、叔母とともに遠く離れたマレーシアへ向かう。パスポートを持つことができない彼らは密航業者に導かれるまま漁船に乗せられ、自然の猛威や警備隊による追跡、人身売買の危機に追い込まれながらも、過酷な道のりを必死に乗り越えていく。

主演を務めたソミーラとシャフィの姉弟をはじめ、キャストには総勢200人を超えるロヒンギャたちを起用。故郷を追われた当事者である彼らの声とまなざしは、演技未経験ながらも映画の世界にリアリティを与えている。2025年・第82回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門にて日本人監督初の審査員特別賞を受賞するなど、世界各地の映画祭で高く評価された。

映画.comより引用

ロヒンギャ問題を知る

バングラデシュとミャンマーを挟む川を往来する少数民族ロヒンギャは、双方の政府から迫害されているがために無国籍な難民として苦難を強いられている。仏教徒が圧倒的なミャンマーに対してムスリムであるロヒンギャは1982年にビルマ市民法によってミャンマー国籍を剥奪されてしまう。そして、政府からの圧力によって村を焼かれたり性暴力に晒される事態となり、バングラデシュへ逃れた。バングラデシュ政府からは、ロヒンギャの大量人口流入を危惧して難民登録を停止している。ミャンマーへ帰還したとしてもミャンマーは依然としてロヒンギャを国民として認めていない事情がある。

本作は難民キャンプで暮らす幼い姉弟が家族との再会のためにマレーシアを目指す物語となっている。無国籍故パスポートが持てないシャフィとソミーラは密航業者の手を借りる。腹をすかせた二人は街中で物乞いをしたり、そこらへんの植物で飢えをしのぎつつ、暴力から逃げ続ける。

映画はダルデンヌ兄弟の作品を彷彿とさせる手振れあるドキュメンタリータッチを主軸としながらも映画としての質感切り替えを巧みに行う。ロヒンギャの集団記憶が想起されるかのように、甘いピントの中で村が焼かれる場面が提示される。そして、常闇を駆ける場面では、死がすぐそこにありながらも敵がどこにいるかわからない様を表現するために残像を強調したイメージとなっている。また、白昼の場面では「おい」と呼びかけられた際に、その声の先をショットで提示せず、フレームの外側に追いやることで観客の想像力を掻き立てる仕組みとなっている。そして、現在進行形の問題を扱っているが故に、安易な着地や感動で消費させないエンディングを向かえる。このレベルであれば、ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門でも何かしらの賞が受賞できただろうと思うほどにパワフルな一本であった。