『ベルサイユのばら』オスカルに惚れた

ベルサイユのばら(2025)

監督:吉村愛
出演:沢城みゆき、平野綾、豊永利行、加藤和樹etc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

池田理代子の同名マンガが長編アニメ映画として突如公開した。わたしはジャック・ドゥ三版しか観ておらず、あまり記憶に残っていないため、ほとんどミリしらな状態で『ベルサイユのばら』を観た。これがとても面白かった。

『ベルサイユのばら』あらすじ


革命期のフランスに生きる人々の愛と人生を鮮やかに描き、テレビアニメ版や宝塚歌劇団による舞台版も大ヒットした池田理代子の名作漫画を新たに劇場アニメ化。

将軍家の跡取りで“息子”として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。隣国オーストリアから嫁いできた王妃マリー・アントワネット。オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。容姿端麗で知性的なスウェーデンの伯爵ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン。18世紀後半のベルサイユで出会った彼らは、激動の時代に翻弄されながらも、それぞれの人生を懸命に生きぬいていく。

オスカルの声を沢城みゆき、マリーの声を平野綾、アンドレの声を豊永利行、ハンスの声を加藤和樹が担当し、宝塚歌劇団出身の俳優・黒木瞳がナレーションを務める。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の吉村愛が監督、「うる星やつら」の金春智子が脚本、「ぬらりひょんの孫」の岡真里子がキャラクターデザイン、「進撃の巨人」の澤野弘之とKOHTA YAMAMOTOが音楽、「呪術廻戦」のMAPPAがアニメーション制作を担当。
映画.comより引用

オスカルに惚れた


本作はフランス革命にいたるまでの壮大な政治戦を描いた作品であり、どう考えても2時間に収まりそうにない内容だが、アニメならではの時短術を用いることで駆け足ながら丁寧に人物を描きこむことに成功している。まず、最初の場面でアニメシリーズのオープニングを彷彿とさせるミュージカルシーンを挿入する。そこでは、本作に出てくる主要キャラクターが自分の個性をアピールする歌唱パートを受け持っており、また後に登場する場面の一部を提示する。これにより、本作がどのようなストーリーラインで進行するのか、注目すべき人物を把握することができる。そして、本編では疾風怒濤のごとくオスカルの物語が進行するのだが、20分に一度のペースで大局的な時代背景の説明が挿入される。また、回想でもって序盤に魅せたシーンの背景が深堀されていく。そのためフランス史や『ベルサイユのばら』のことを知らなくても「あっこれ進研ゼミでやったところだ!」と場面を思い出し、それにより興奮が高まっていく。その興奮がオスカルの苦悩へと結びつき、思わず涙する物語となっているのだ。

本作において、原作がそうなのだろうけれども、オスカルの人物描写が素晴らしい。通常、この手の作品において軍師ポジションは天才か狂人かで描かれる。しかし、彼女の場合、苦悩するひとりの人間として描かれている。最初は、国家のためにマリー・アントワネットを守る使命を持っていたオスカル。貴族社会の中だけしか知らず、わがままで傲慢な姫へと上り詰めていく彼女。一方、オスカルは市井の生活と触れる中で、マリー・アントワネットを守ることの本質にあたる「国家」が見えてくる。市民を守ることこそが重要だと考え、近衛隊に入ることとなる。彼女は守るべきものに尽くそうとする中で幾度も「知った気になっていたこと」を突き付けられ涙する。そして、もっと知るためにはどうすればよいのかと行動へ移していく。PDCAを回しながら成長していく過程を我々は知っている。なので、きれいごとに思える名言が逐一重厚なものとなってくるのだ。これは男女問わずともオスカルに惚れるだろう。私は彼女にメロメロとなり劇場を後にしたのであった。
※映画.comより画像引用