【第37回東京国際映画祭】『Underground アンダーグラウンド』廃墟、記憶、土地

Underground アンダーグラウンド(2024)

監督:小田香

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

小田香監督は、その地にたゆたゆ歴史に関心がある映像作家である。第37回東京国際映画祭で上映された新作『UNDERGROUND アンダーグラウンド』は前作短編『GAMA』の続編にあたる内容でもあり、土地=記憶の結び付けとして語り部を配置している。

ただ、本作の場合、インスタレーション的側面が強く、その観点に眼差しを向けることが重要な気がする。

『Underground アンダーグラウンド』あらすじ

地下の暗闇から「影」が姿を現す。ある女の意識と交信し、女は白昼夢を見るように、時代も場所も超えた断片的な記憶を見るようになる。女の姿を借りて「影」は旅をする。地上から見えない場所に身を置いて、時の流れに埋もれた人の記憶に耳を澄ませ、かつてそこで起きたことをトレースしてゆく。「影」は、ふと入った映画館で出くわした映像に導かれ、湖の底に沈んだ街に向かう。

※第37回東京国際映画祭サイトより引用

廃墟、記憶、土地

洞窟がライトアップされる、そこに亀の影が重なりアルタミラ洞窟のようなものが形成される。洞窟壁画は、ヒトがその土地の行動や思想、手段を残すものであり、我々が洞窟壁画を見ることで土地と歴史が紐づく。小田香監督はQ&Aを聴く限り、感覚的に映画を作る方なので、ここで亀を出したところにはロジックはないように思える。つまり洞窟壁画の歴史的にそこには狩猟や家畜の対象が描かれる必要があると思っているので、亀にする必然性を描かねばならないのだが、それがない。彼女の弱点が露呈してしまっている。

ただ、一方でヒトがいない土地や廃墟に留まらず、現在も活動している地下鉄空間を映すことで歴史を断絶したものではなく陸続きのものとして捉えたのは英断だと思った。