『鶏の墳丘』カニロボVSハードエッジロボット

鶏の墳丘(2021)
原題:丘陵之鸡
英題:Chicken of the Mound

監督:シー・チェン

評価:75点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

先日、シアター・イメージフォーラムでユニークな中国アニメーションを観てきた。ここ最近、中国アニメーションの勢いが凄い。『雄獅少年/ライオン少年』は獅子舞の細かい動きを精密に3DCGで再現している。『深海レストラン』では、ジブリ映画的要素をディズニー/ピクサー映画のタッチで描いたものだが、水の滑らかな質感、複雑なモンスター造形が特徴的であった。『アートカレッジ1994』のリウ・ジエン監督は、一見するとアニメにする必要のないような動きのない画を通じて新しい表現を模索している。このように、様々なアプローチから日本やハリウッドの要素を継承しつつ新しい表現の提示が行われている。今回観た『鶏の墳丘』はシー・チェン監督がほとんど一人で3年近くの制作期間を経て完成させた作品である。実際に観ると脳天を殴られたような衝撃を受けたのであった。

『鶏の墳丘』あらすじ

中国アニメーション界の知られざる異才シー・チェンが、3年の制作期間を費やして完成させた長編3DCGアニメーション。監督、原作、脚本、プロデュース、キャラクターデザイン、美術、アニメーション、編集、音楽など、作品制作におけるあらゆる工程をシー・チェンがひとりで担った。ロボットたちが自分たちを人間と思いこみ、日々、戦争に明け暮れている世界を舞台に、自分は何者かのコピーではないかという葛藤を抱えた好奇心旺盛なニワトリが世界を探検し、次第に謎に包まれた世界の真実が明らかになっていく様子を描く。アヌシー国際アニメーション映画祭、オタワ国際アニメーション映画祭、新千歳空港国際アニメーション映画祭など各国のアニメーション映画祭で上映された。

映画.comより引用

カニロボVSハードエッジロボット

自分を人間だと思い込んでいるカニロボたち。それを巨大な人間型のロボット、ハードエッジロボットがいびっている。やがてカニロボとハードエッジロボットとの間で仁義なき戦いが勃発していく。アナログ的動きとデジタル的動きをアンバランスに配置し、目まぐるしく変化する局面、つんざくような音が画を支配する。戦争の凄惨さを聴覚と視覚でもって観客に突きつけていく。戦争が行われる中で個のベクトルを一定方向に統一するためにプロパガンダ動画が作られる。そして市民の安全を確保するために拡張世界を使ったミラータウンが作られ、ユートピアとなる。戦争は終結したのか?カニロボとハードエッジロボットは距離を取り和解したのだろうか?映画は「否」と答える。結局のところ、ミラータウンを作ったところで『マトリックス』のように物語による攻撃を受けて破壊は繰り返されてしまうのである。シー・チェン監督は、バグのような映像の洪水を通じて戦争論を語る。そのアプローチのユニークさに惹き込まれたのであった。

※映画.comより画像引用