『Pictures of Ghosts』かつてそこに映画の街があった

Pictures of Ghosts(2023)

監督:クレベール・メンドンサ・フィリオ

評価:50点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『バクラウ 地図から消された村』のクレベール・メンドンサ・フィリオの新作がまさかのドキュメンタリーと訊いて観ることにした。彼の作品は一貫して場所の歴史を巡るものなので、よくよく考えれば自然ではある。果たして……。

『Pictures of Ghosts』概要

Downtown Recife’s classic movie palaces from the 20th century are mostly gone. That city area is now an archaeological site of sorts that reveals aspects of life in society which have been lost. And that’s just part of the story.
訳:レシフェのダウンタウンにあった20世紀の古典的な映画館は、ほとんどなくなってしまった。その市街地は現在、失われた社会生活の一面を明らかにする一種の遺跡となっている。そして、それは物語のほんの一部に過ぎない。

IMDbより引用

かつてそこに映画の街があった

『Neighbouring Sounds』や『アクエリアス』の舞台となったレシフェのアパートから語りが始まる。改装に去らされ、土地の歴史が風化してしまう状況に対する切なさが『アクエリアス』の原動力であることが分かる。そんな彼の眼差しは廃墟となる映画街へと向けられる。彼のドキュメンタリー手法は、タイトル通り「幽霊」を呼び起こすようなものであり、画を重ね合わせていくところに歴史の重層的な部分が観られる。そして映画館と礼拝堂を紐づけ、映画館が特別な場所であることを語る。正直、あまりに感傷的すぎて映画としての面白さはないように思えるが、フィリオ監督の原点を知る上で重要な一本だったと思う。