『Solarium』アピチャッポンの個展に行ってきた

Solarium(2023)

監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

評価:90点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

今、上野でタイの巨匠アピチャッポン・ウィーラセタクンの個展が開催されている。銭湯を改装したSCAI THE BATHHOUSEにて彼の短編『Solarium』が観られるということで行ってきた。これが凄まじい作品であった。

『Solarium』あらすじ

拡張した時間にまたたく光の効果によって、アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品は、孤独な夢、近しい身内の物語や抑圧された集団の記憶など、心の片隅に追いやられた不穏な心理を予感させます。

幼少期に夢中になったホラー映画に着想をえたウィーラセタクンの新作《ソラリウム》(2023年)[1]は、ガラスの両面に映し出される2チャンネル映像のインスタレーションです。盲目の妻を救うため、患者の眼球を盗んだ狂気の医師(マッドドクター)を描くタイ映画『The Hollow-eyed Ghost』(1981)を再現し、暗闇のなかで自身の眼球を探しさまよう男の姿が映し出されますが、彼はやがて日の出の太陽によって破壊されてしまいます。そして、ホログラフ・フィルムが貼られた映写用のガラスパネルに亡霊が浮かび上がり、鑑賞者のいる物理空間に息づき始めます。

※SCAI THE BATHHOUSEサイトより引用

浮遊する目玉

無機質な部屋にガラスのパネルが貼られており、2方向からプロジェクターで映像が映し出される。観客はヘッドホンをつけて鑑賞することとなる。金属の部屋に入ったかのような重い音が浮遊する中、パネルに目玉が映し出される。かと思いきや、ゾンビのようなおじさんが太陽を彷彿とさせる球体の周りを徘徊する。背景の暗部と明部がシームレスにスプリットスクリーンを形成し、やがて目玉の海へと辿り着く。無数の目玉は、ガラスのパネルを超え、客席にまで侵食してくる。かと思えば、床と壁との間に吸い込まれていく。さらに『MEMORIA』のような「波」の言語で観客に語りかけてくる。夢の中における曖昧さを見事に具現化した傑作であった。