『ビヨンド・ユートピア 脱北』壮絶で不気味な逃避行

ビヨンド・ユートピア 脱北(2023)
Beyond Utopia

監督:マドレーヌ・ギャヴィン

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされそうな作品『ビヨンド・ユートピア 脱北』。2024年の映画館初めはこの壮絶な脱北ドキュメンタリーから始めたのであった。

『ビヨンド・ユートピア 脱北』概要

脱北を試みる家族の死と隣り合わせの旅に密着したドキュメンタリー。

これまで1000人以上の脱北者を支援してきた韓国のキム・ソンウン牧師は、幼児2人と老婆を含む5人家族の脱北を手伝うことに。キム牧師による指揮の下、各地に身を潜める50人以上のブローカーが連携し、中国、ベトナム、ラオス、タイを経由して亡命先の韓国を目指す、移動距離1万2000キロメートルにもおよぶ決死の脱出作戦が展開される。

撮影は制作陣のほか地下ネットワークの人々によって行われ、一部の詳細は関係者の安全のため伏せられている。世界に北朝鮮の実態と祖国への思いを伝え続ける脱北者の人権活動家イ・ヒョンソをはじめ、数多くの脱北者やその支援者たちも登場。「シティ・オブ・ジョイ 世界を変える真実の声」のマドレーヌ・ギャビンが監督を務めた。2023年サンダンス映画祭にてシークレット作品として上映され、USドキュメンタリー部門の観客賞を受賞。

映画.comより引用

壮絶で不気味な逃避行

近年、カメラが小型化し今まで観ることのできなかった社会の暗部のありのままを目の当たりにすることが増えてきた。難民の国境を超えていく様子を捉えた『ミッドナイト・トラベラー』、同性愛者が迫害されてしまうチェチェンからゲイを救助しようとする様子を捉えた『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』が記憶に新しい。これらと比べると、脱出描写は手ブレが激しく、暗闇での撮影が多いので明確な画を追うのが難しい。しかし、それを補うように北朝鮮の歴史(日本が明確な原因となっていて申し訳なくなる)、音声データが挿入されることで、一家の脱出劇に不気味さが宿る。それは、いつ捕まるかどうか分からない、そして敵が誰か分からない不気味さにある。ブローカーも信頼できない。いつ裏切るか分からない中、車に乗り込み、涙するように感謝するが、それが仇となって弱みを握られる事態に陥らないかとハラハラしながら映画に釘付けとなるのだ。噂通りアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート有力候補作なのは間違いない一本であった。

※映画.comより画像引用

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