『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』中断、伸縮、そして宙吊り

劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦(2024)

監督:満仲勧
出演:村瀬歩、石川界人、日野聡、入野自由、林勇、細谷佳正etc

評価:70点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

最近、アニメ映画の勢いが凄い。話題作が公開されると、1日10回ぐらいのペースで上映されている。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が今、劇場で大ヒットしているらしいので観に行った。正直、バレーボールは高校時代の体育の授業で嫌な思い出しかないので興味がないスポーツである。原作も全く知らない。でも『THE FIRST SLAM DUNK』のように傑作なのかもしれない。そう感じて映画館に足を踏み入れたのであった。

『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』あらすじ

バレーボールにかける高校生たちの熱い青春を描いた古舘春一の人気漫画を原作とする大ヒットアニメ「ハイキュー!!」の続編となる劇場版2部作の第1部。原作の中でも屈指の人気エピソード「烏野高校VS音駒高校」を映画化。

強豪ひしめく春高バレー宮城県予選を勝ち上がり、優勝候補のひとつとされていた兵庫県代表・稲荷崎高校を破って3回戦に進出した烏野高校。対戦相手となる音駒高校はかつて烏野とライバル関係にあり、一時は交流が減ったものの日向たちが入部してからは再び合宿や練習試合で共に汗を流す良き仲間となっていた。その戦いは校名についた「カラス」と「ネコ」の名前から「ゴミ捨て場の決戦」と呼ばれる。プレースタイルも真逆で、超攻撃型の烏野に対し、音駒は「つなぎ」をモットーにする守りのチーム。ついに現メンバーでの公式戦初対決に臨むことになった彼らは、全国大会の舞台で白熱の試合を繰り広げる。

テレビアニメに続いてProduction I.Gがアニメーション制作を手がけ、テレビアニメ第1~3期の監督を務めた満仲勧が監督・脚本を担当。

映画.comより引用

中断、伸縮、そして宙吊り

まずバレーボールの運動について考える。バレーボールとは、A地点からB地点にボールが移動するのを阻害しあって、思わぬ着地を引き起こす運動によるスポーツである。それを映画に落とし込むと、修羅場映画のような宙吊り状態の持続がメインとなるだろう。実際に映画を観ると、良くも悪くも「阻害」の映画であった。『THE FIRST SLAM DUNK』方式で、ある試合を軸に回想でもって登場人物の葛藤やこの試合にいたるまでの心理的変化を紐解いていく。ただ、『THE FIRST SLAM DUNK』とは違い、最初の段階で全登場人物を紹介した上で回想に入るので、驚きが少なく、この「阻害」がノイズに感じる部分があった。また、ジャンプ漫画映画にありがちな小ボケという「阻害」が物語を文字通り「阻害」しているのも気になった。

それでも、85分という短い時間の中に膨大な人物の葛藤を描き切る手腕は見事としか言いようがない。また、アクションに関して、実写では速すぎて捉えるのが難しい修羅場の宙吊り状態をスローモーション、スプリットスクリーン、通常速度とテクニックの組み合わせで手数を増やしながら描いているところに好感を抱いた。また、強豪校の試合でありながら決定的な凡ミスも描いているので、ラリーが続くのかどうかが予測不能になりより面白く感じた。

そしてなによりも、終盤の主観によるプレイ。ラリーが途切れそうな時に、主体が床に倒れる。フレームの外側で試合が続いているのか終わっているのか観客の想像力にゆだね、ふと彼が立ち上がるとかろうじて試合が続いている躍動感の素晴らしさよ。アニメは全てを描く必要があるが、それだけに描かない選択を取る重要性が本作を観るとよくわかる。

なるほど、これはヒットも納得な作品であった。
※映画.comより画像引用