【ネタバレ酷評】『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』夏休みと永遠

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章(2024)

監督:黒川智之
出演:幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子etc

評価:30点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

浅野いにおの同名コミックを映画化した『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』の後章がようやく公開された。前作の評判の高さに反して、SNSでの評判は芳しくないように見える。私自身、前作は宇宙人言語の作り込みに感銘を受けたところがある。ところが、蓋を開けてみると、苦々しい結果に終わってしまった。今回はネタバレありで本作について語っていく。なお、酷評となっているので要注意だ。

『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』あらすじ

地球外からの侵略者が日常に溶け込んだ世界で青春を謳歌する少女たちを描いた浅野いにお原作の同名コミックをアニメーション映画化した2部作の後編。

入試に合格して亜衣や凛と同じ大学に通い始めた門出と凰蘭は、竹本ふたばや田井沼マコトという新しい友だちもでき、尾城先輩が会長を務めるオカルト研究会に入ることに。一方、宇宙からの侵略者は東京各地で目撃され、自衛隊が駆除活動を繰り広げていた。上空の母艦は傾いて煙が立ち上り、政府転覆を狙って侵略者狩りを続ける過激派グループ「青共闘」も暗躍。世界の終わりに向かってカウントダウンが始まるなか、凰蘭は不思議な少年・大葉に再び遭遇する。

音楽ユニット「YOASOBI」のボーカル・ikuraとしても活動するシンガーソングライターの幾田りらが門出、歌手・タレントとして活躍するあのが凰蘭の声をそれぞれ演じるほか、浅野いにお原作の映画「零落」の監督を務めた俳優の竹中直人が“侵略者の議長役”の声優として友情出演。

映画.comより引用

夏休みと永遠

私は唖然とした。前章であれだけ、作り込まれた独自の宇宙人語で人間との意思疎通が取れない様を描き、観客をも共犯関係に導いたのにあっさりとその関係性を捨て去り、奴らが日本語を話していたことに。これは当然ながらギミックであり、宇宙人同士は言葉が通じる様を描いている。映画としても中盤になると、宇宙人目線から日本人を見ると独自の言語を喋っている得体の知れない存在に映る逆転であることが説明される。だが、アイドルの大葉に擬態した宇宙人以外日本語を喋る必要があったのだろうか?もちろん、この逆転のギミック自体はディスコミュニケーションを主軸とする本作において重要なものであるが、あまりに不要な日本語描写が多すぎる。

冒頭の場面では、人間から逃げる大変さは画だけで伝わるはずである。また、宇宙人の地上アジトでのやり取りも、人類への抵抗か逃亡かしか選択肢がなく、運動で容易に観客へ状況を伝えることができる。にもかかわらず日本語を使って会話描写を入れるということは、我々観客を信用していないと思えてしまうのだ。

また、前作のギミックとしてオンタンの記憶から欠落した過去が描かれる。この説明がここでなされるのだが、原作もそうらしいのだが、並行世界として処理されている。つまりなんでもありになってしまう危うさがある。ここで重要となってくるのは門出とオンタンの絆であろう。時空が変わっても繋がる友情をどこまで描けるのかが重要となってくる。世界を救うも滅ぼすも二人がキーとなってくる。しかしながら、ノイズとしてアイドルの大葉に擬態した宇宙人が間に入ってくる。それだけでなく、地球の危機を救おうと彼が頑張ってしまうのだ。これにより映画は横滑りしてしまい、二人の関係性がどうでもよくなってしまう欠陥が生まれてしまう。

ただ、良かった部分も多少はある。世界が終わろうとしているのに、時間が引き延ばされたような大学生活が続く。大学生活はモラトリアムであり、夏休みのようなフワフワしたものがある。「永遠に続くといいな」という願望の先にあるものは何か?それは虚無である。その虚無をオンタンの兄が背負っていたわけだが、東京の終わりとともに彼女らに継承される。セカイ系の物語として、キャラクターとキャラクターが繋がっており、そこは良かった。

なので、結果的にイマイチを通り越して腹立たしくなってしまった。海外公開する際はアニメシリーズとしてやるそうだが、最初からそれで良かったのではないかと思う。そして、宇宙人の設定が明らかにイスラエルとパレスチナの関係になっているのだが、海外のアニメファンはどのように本作を受容するのか気になるところがある。

P.S.ところで大葉宇宙人が電話でいろんな言語を駆使する場面でአዎ(アウォ)とアムハラ語を使っていたように思えるが気のせいか?
※映画.comより画像引用