【ニコラ・フィリベール特集】『かつて、ノルマンディーで』経験と思索

かつて、ノルマンディーで(2007)
RETOUR EN NORMANDIE

監督:ニコラ・フィリベール

評価:70点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

早稲田松竹のニコラ・フィリベール特集に併せて、メルカリにて『かつて、ノルマンディーで』のDVDを購入した。内容を調べずに観たのだが、まさかの『ブリュノ・レダル、ある殺人者の告白』と似た題材で驚かされた。

『かつて、ノルマンディーで』概要

「ぼくの好きな先生」のニコラ・フィリベール監督が、自らの映画製作の原点を振り返るドキュメンタリー。ノルマンディーで実際に起きた殺人事件を映画化したルネ・アリオ監督作「私ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した」(76)の助監督としてこの作品に携わったフィリベールが、30年の時を経てノルマンディーを訪れ、当時メインキャストとして映画に参加した農民たちと再会する。

映画.comより引用

経験と思索

30年前に、実在の事件を基にした映画が撮影される。ノルマンディーでピエール・リヴィエールによる殺人事件が起きる。裁判で彼の精神疾患による判断が焦点となった。彼は、精神病を患っていたようではあるが、手記に事細かく事件のことが書かれており、また医者による診断では脳に異常はないとのことだった。映画は素人の俳優を起用して行われた。それから30年が経ち、監督はノルマンディーに戻ってくる。ニコラ・フィリベール監督は一貫して精神疾患を持つ者のケアとして「自由」が必要なのではと考えてきた。本作では実際の刑務所を映しながら、現代の価値観で彼は救うことができるのかを模索していく。同時に、当時の出演者たちも必然と事件に向き合っており、心の奥で撮影と自分の倫理観が照らし合わされていく。かなり特殊なドキュメンタリーであり、ニコラ・フィリベール監督のエッセイ色が強い作品となっているが、本作を踏まえると『アダマン号に乗って』に深みが増す。ユニークな映像体験であった。

※映画.comより画像引用