昼のアポロン 夜のアテネ(2024)
原題:Gündüz Apollon Gece Athena
英題:Apollon by Day Athena by Night
監督:エミネ・ユルドゥルム
出演:エズギ・チェリキ、バルシュ・ギョネネン、セレン・ウチェル、ギゼム・ビルゲンetc
評価:70点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第37回東京国際映画祭は洞窟さんの星評を毎日更新しながら楽しんでいる訳だ。絶賛一色な作品、酷評で盛り上がる作品、賛否が分かれる作品とバラエティ豊かで毎日お祭り騒ぎなのだが、ダークホースがアジアの未来部門にあるらしい。それが『昼のアポロン 夜のアテネ』である。この時間はイラン映画の『冷たい風』を観ようと思ってたのだが、絶望的なまでに評判が悪い。代わりに本作はトップクラスに評価が高い。ということで急遽観ることにした。
『昼のアポロン 夜のアテネ』あらすじ
自分を捨てた母を捜し求めて古代遺跡が残る地中海沿いの都市シデを訪れたダフネは、革命家、娼婦、巫女といった不思議な人々に出会い、彼らの協力を得て母を見つけようと奮闘する。トルコ期待の女性監督ユルドゥルムのデビュー作。舞台となっているシデはアンタルヤに近い海辺の町で、古代ギリシャ時代には港町として栄えた歴史を持つ。ギリシャ神話に登場する男女の神――理性をつかさどる太陽神のアポロンと知恵・学芸・戦争をつかさどる女神のアテネ――をタイトルに冠し、女性と男性、死者と生者といった二項が並立しながらファンタジー風味の物語が展開する。
※第37回東京国際映画祭より引用
えっ?ここ、ギリシャじゃないの?
『昼のアポロン 夜のアテネ』は、銀座シネスイッチで一般公開されていそうな作品で安定感のあるストーリーとひとつまみの変化球が心地良い一本。大いに楽しんだのだが、実は盛大に誤読をやらかしてしまった。
てっきり、孤児である主人公はトルコからギリシャへ行方不明となった母を探しに行き、観光ガイドしている彼女と再会する話だと思っていた。しかし、物語の舞台はトルコ国内であった。確かにトルコにはギリシャ様式を受け継いだ遺産が多くある。雰囲気的には世界遺産のエフィソスに近い。だが、映画の舞台となっている遺産はエフィソスですらなく、シデにあるギリシャ遺産だったのだ。邦題が邦題なのもあり、場所を完全に観誤る事態を発生させてしまった。
閑話休題。この物語はオーソドックスな家族探しものでありながら、そのプロセスがユニークである。なんと幽霊軍団を使って母を探していくのだ。最初は、親戚か現地で知り合った誰かだろうと思って観ているのだが、目の前に人がいるのに、その人がいないように振る舞っている存在が散見される。やがて、ひとり、またひとりと主人公にしか見えない幽霊だと分かっていき、感情的な幽霊たちと口論しながら、観光ガイドをする母へと辿り着く。このプロセスが面白い。また、旅行付きとしては、ツアー後にガイドを呼び止め、個別ガイドへと切り替えていく即興の振る舞いに心惹かれるものがあり、年間ベストどうのこうのな作品ではないが観てよかった。