リアリティ+(2014)
Reality+
監督:コラリー・ファルジャ
出演:ヴィンセント・コロンブ、ヴァネッサ・ヘスラー、オーレリアン・ミュラー、アウレリア・ポワリエ、サミュエル・トレパニエetc
評価:50点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
第77回カンヌ国際映画祭にて脚本賞を獲った『The Substance』が待ち遠しい。本作のルーツともいえる短編映画『リアリティ+』を入手したので観た。
『リアリティ+』あらすじ
首にチップを埋め込んだ人間は理想の姿に生まれ変われるというリアリティ・プラスというサービスが開始された。しかもその新しい姿はチップが埋め込まれた同士が確認できる。愛に飢えたモテない男が早速サービスを使用し始めるが、見せかけの恋に翻弄されていく…
なりたい自分だけを見てくれ
さえない男が鏡の前でデバイスのセットアップを行っている。自由な顔に入れ替え、声も買えることができる。まるでゲームのキャラクリのようなことが現実でもできるのだ。このサービスを使っている者同士はどうやら同期が取られているらしく、互いに作られた顔しか認識できない。実際に、男がクラブで転び、サービスが故障すると、周囲にいるユーザーの本当の顔が露わになる。セクシーな女はぽっちゃりおばちゃんだったりするのだ。男はカフェで、美女と一目ぼれをするのだが、映画はその表層的な恋愛を皮肉る。
本作は2014年制作の作品なのでしょうがないのだが、ユニークな題材に反してテーマの掘り下げが浅く、表層的に留まってしまっている。
今やメタバースやVTuberなど、なりたい自分のペルソナを通じて他者と対話を行い、それが親密な関係に繋がるケースがいたるところで起こっている。素の自分では接触することのなかった状況が「なりたい自分」のアバターを通じて接点を持ち、いつしか表層に留まらない関係性が生まれることがある。また、バ美肉の場合、親密な関係性が生まれた状態で素と出会ったときに、バ美肉のときの状態と同じように感じるケースがあるとも聞いたことがある。
本作から10年で、現実では「なりたい自分」を作ったうえでのコミュニケーション像は大きく進歩したといえるのである。恐らくコラリー・ファルジャは『The Substance』でルッキズムに対する皮肉を映画にぶつけてくるのだろうけれど、どこまで今を掘り下げられるかが期待である。