Orlando, My Political Biography(2023)
監督:ポール・B・プレシアド
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ここ最近、作家や哲学者が思索表現の手法として「映画」を取る例が増えているように思える。今回、MUBIにて鑑賞した『Orlando, My Political Biography』は哲学者のポール・B・プレシアドが制作した作品である。ポール・B・プレシアドといえば、トランスジェンダー活動家として知られており、「カウンターセックス宣言」や「あなたがたに話す私はモンスター」などといった著書が日本でも翻訳販売されている。そんなポール・BGM・プレシアドがジェンダー論の中で重要な小説とされているヴァージニア・ウルフの「オーランドー」の物語を映像化する過程を捉えた。メタ的な演出を通じて「オーランドー」を再考していく物語となっている。これが想像以上に視覚表現にこだわっていて良かった。
『Orlando, My Political Biography』概要
Academic virtuoso turned filmmaker Paul B. Preciado’s Berlin Film Festival award-winning doc tells his and others’ stories of transition through unique reenactments and visual interpretations of Virginia Woolf’s Orlando: A Biography.
訳:ベルリン映画祭で受賞したポール・B・プレシアードのドキュメンタリーは、ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』のユニークな再現と視覚的解釈を通して、彼や他の人々の変遷の物語を語る: このドキュメンタリーは、ヴァージニア・ウルフの『Orlando: A Biography』のユニークな再現と映像的解釈を通して、彼や他の人々の変遷を描いている。
再考「オーランドー」
街にキャスト募集の張り紙を貼るところから物語は始まる。「オーランドー」を演じるために集まった、LGBTQ+様々な背景を持つ者たちが、襞襟をつけながら、自分の物語と結びつけながら「オーランドー」を解釈する。22世紀においてジェンダーと社会の関係も変わっており、当時はなかった、あるいは見過ごされてきたものも露わになっていく。たとえば、面接の場面で「あなたの性別を教えてください」と訊かれる。ため息をつきながら、難しい説明をする。その中で自分が傷つく様子が演技で再現されていく。内面の性別と外見の性別の不一致に対して社会は、型に当てはめようとする。その中で生まれる加害性が強調されるのだ。軽く、プレシアドに関して調べたところ、どうやらプレシアドは社会によって規定される性別に対して問題を投げかけているようで、この場面に力が入っているのも頷ける。正直、大学時代にジェンダー論の授業は取っていたものの、詳細の解説が欲しい部分も多く、鑑賞後に「カウンターセックス宣言」を購入した。論文映画でありながら視覚的面白さがある作品なので、日本になんらかの形で来てほしいものがある。