『15 Hours』『青春』のための長い予告編

15 Hours(2017)

監督:ワン・ビン

評価:60点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

ワン・ビンの『青春』が『苦い銭』、『15 Hours』と地続きなのは明白だったのだが、実際に『15 Hours』を観てみるとこれこそが予告編なのではないかと思う代物であった。『青春』を語る上で、『苦い銭』以上に本作の存在が重要である。今回はその件について語っていく。

『15 Hours』概要

A single-shot documentary filmed in a centralized garment processing facility in China, which consists of 18,000 production units and employs some 300,000 migrant workers.
訳:18,000の生産ユニットからなり、約30万人の出稼ぎ労働者を雇用する中国の集中衣料加工施設で撮影されたワンショット・ドキュメンタリー。

MUBIより引用

『青春』のための長い予告編

本作は『青春』と同じ縫製工場を15時間にまとめた作品である。『青春』と違うところは、作品のほとんどが工場と廊下だけで進行しており、労働者の宿舎や食事処といったところは見せないところにある。『青春』では、労働者が階段を降りていき社長と交渉をしたり、食堂で飯を囲うといった垂直の運動でもって労働者の生活を捉えていた。

対してこちらは水平の運動で、労働者の生活を捉えている。長回しによる、工場の全景を捉える場面から始まる。本作でのカメラは、忍耐のものとなっており、廊下を労働者が歩いて行っても、なかなかついていかない。ついていくか否かの葛藤を思わせる手振れがあり、その宙づりの状態で、扉がバンと開き別の労働者が現れる決定的瞬間を捉える。このような溜めのショットによる豊かな運動に特化しているところが面白い。

また、『青春』は編集の 映画となっているため、零れ落ちてしまった部分を本作が補っている。意外な点で言えば、身体障がい者も他の労働者と同様の立ち位置で服を製造している描写があるといったところだ。劣悪な環境でありながら、成果を前に平等である点を描いていた『青春』。だが、この部分が欠落していたのは意外に思えた。

全体的に興味深く観たものの、さすがに15時間は長い。『原油』はジェイムズ・ベニングのようにバキバキに決まったショットが多かったので、そこまで退屈しなかったのだが、こちらは結構な苦行であった。

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