ブレスレス(1983)
BREATHLESS
監督:ジム・マクブライド
出演:リチャード・ギア、ヴァレリー・カプリスキー、アート・メトラーノetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ジャン=リュック・ゴダール『勝手にしやがれ』のリメイクである『ブレスレス』を観た。監督のジム・マクブライドはゴダールに魅了された監督の一人であり『デイヴィッド・ホルツマンの日記』でもゴダールを擦っている。ゴダール映画のリメイクは危険な香りがするのだが、結論からいえば大傑作であった。
『ブレスレス』あらすじ
ジャン=リュック・ゴダール監督の傑作「勝手にしやがれ」を、1980年代のアメリカに置き換え、「愛と青春の旅立ち」で大ブレイクを果たしたばかりのリチャード・ギア主演でリメイクした作品。自由奔放で破天荒なチンピラ青年ジェシーは、ラスベガスで一夜を共にしたフランス娘モニカのことが忘れられず、彼女を追ってロサンゼルスへと向かう。ところがその道中、誤って警察官を撃ってしまい、警察から追われることに……。
ゴダール『勝手にしやがれ』のリメイク
本作は投げる運動と拾う運動で構成されている。リチャード・ギア演じるチンピラは、コインを投げ、車の窓から写真を投げ捨てている。そんな彼が警察に追われ、「両手を挙げろ」と言われる。咄嗟に車の中から銃を拾うと暴発して警察が死亡してしまう。拾うアクションによって運命の歯車が回り始めるのだ。そこから彼は車を拾っては捨てを繰り返しながら彷徨う。彼はアメコミヒーローのシルバーサーファーと自分を重ね合わせる。なぜだか地球に囚われてしまう自分と、場から逃げ出せない自分が重なるのである。そして、飄々としながらも女を携え逃避行する果て。彼は再び銃を拾うことにより運命から解放される。それは死によってである。ダラダラ進んでいる映画だと思いきや緻密に張り巡らされた理論が映画を面白くするタイプ。これは恐らくポール・トーマス・アンダーソンが『インヒアレント・ヴァイス』や『リコリス・ピザ』を作る際に参考にした作品だと思った。