【アカデミー賞】『アメリカン・フィクション』いくらなんでも非創作者をバカにしすぎでは

アメリカン・フィクション(2023)
American Fiction

監督:コード・ジェファーソン
出演:ジェフリー・ライト、トレイシー・エリス・ロス、ジョン・オーティスetc

評価:60点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

アカデミー賞シーズンですね。ここ最近はあまり関心が持てないアカデミー賞なのだが、仕事の関係で追う必要があり本腰を入れている。さて、プライムビデオで第96回アカデミー賞5部門ノミネートの『アメリカン・フィクション』を観た。面白くもあり、かなりの問題作であった。

『アメリカン・フィクション』あらすじ

「ウォッチメン」「グッド・プレイス」など人気ドラマの脚本家として活躍してきたコード・ジェファーソンが、パーシバル・エベレットの小説を原作に初メガホンをとった監督デビュー作。アカデミー賞の前哨戦として重要視されるカナダのトロント国際映画祭で最高賞にあたる観客賞を受賞して注目を集め、第96回アカデミー賞でも作品賞ほか5部門にノミネートされた。

作品に「黒人らしさが足りない」と評された黒人の小説家モンクが、半ばやけになって書いた冗談のようなステレオタイプな黒人小説がベストセラーとなり、思いがけないかたちで名声を得てしまう姿を通して、出版業界や黒人作家の作品の扱われ方を風刺的に描いたコメディドラマ。

ダニエル・クレイグ主演版「007」シリーズのフェリックス・ライター役などで知られるジェフリー・ライトが主演を務め、アカデミー主演男優賞にノミネート。共演のスターリング・K・ブラウンも助演男優賞にノミネートされた。そのほかの出演者は「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」のトレイシー・エリス・ロス、「アース・ママ」のエリカ・アレクサンダー、「バービー」のイッサ・レイ。

映画.comより引用

いくらなんでも非創作者をバカにしすぎでは

大学をクビになり、親の介護で莫大な金を必要としている小説家が、通俗な黒人小説を書いたら出版社に大受け。犯罪者と偽って出版しようとしているもんだからFBIまで動き始めてしまい、なんとか文学賞から落選させようと審査員を務める。修羅場映画として、ユニークなアプローチであり、トーンは抑えめながらも次々と修羅場がやってくるところは面白く観た。そして「黒人」というラベルが貼られ、社会から色眼鏡で見られてしまう現状を軽妙に風刺している点でアクチュアルな作品だと思った。一方で、全体的に非創作者をバカにしすぎている問題がある。確かに大衆はわかりやすい作品に触れることが多い。実際に映画ライターをしていると、批評とは呼べない『トップガン マーヴェリック』のあらすじをなぞった程度のものや⚪︎選記事の方がアクセス数が高い問題があり苦悩する。だが、そうはいっても「読んでもらっている」のだからバカにするのは良くないと思う。また、編集者もビジネスのために深く作品と向き合う仕事なのに、あまりにも盲目的な存在として描かれるのはどうかと感じてしまった。ただ、脚色賞にノミネートされるぐらいなので、小粋なセリフは良かったりする。特にジョニーウォーカーを使った高尚と通俗の創作論を語る場面は映画ライターとして熱いものを感じたのであった。とはいえ、そこまで評価されるような作品じゃない気がした。

※映画.comより画像引用