ぼくら、20世紀の子供たち(1993)
NOUS, LES ENFANTS DU XXEME SIECLE
監督:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワetc
評価:75点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
2024年最初のヴィターリー・カネフスキー特集。彼が撮ったドキュメンタリー『ぼくら、20世紀の子供たち』を観たのだが、『動くな、死ね、甦れ!』『ひとりで生きる』の世界観そのもので恐怖したのであった。
『ぼくら、20世紀の子供たち』あらすじ
巻頭、ペテロパブロフスク要塞前にたむろして、小瓶を売る少年たちに、監督のカネフスキーがさまざまな質問をする。やがて彼らのすみかにカメラは入り、話を聞く。施設、鑑別所にその後舞台は移り、そこで刑に服する少年、少女たちに話を聞き、彼らの生活を映し出す。その中にはカネフスキーの映画「動くな、死ね、甦れ!」「ひとりで生きる」に主演した、パーヴェル・ナザーロフの姿も見られる。そこを訪れる、ナザーロフと同作で共演したヒロインのディナーラ・ドルカーロワ。お互いに成長した二人は、「動くな、死ね、甦れ!」の劇中歌を歌う。映画は冒頭で描かれた産院の様子を映して、再びモスクワの広場へと戻る。そこでカネフスキーは、「5000ルーブルと引き換えに父親を殺すか?」と子供達に質問を投げかけ映画は幕を閉じる。
剥き出しの暴力の中の理性
扉が開く、赤子が並ぶ。パンの出荷が映し出される。まるで機械的に社会へ送り出されてしまうかのように子どもが捉えられるのである。監督は勇猛果敢に街中のストリートチルドレンに声をかける。少年少女は戯れ合うにしてはあたりが強く、もはやイジメレベルのアクションを起こしながらインタビューに答えていく。複数人が同時に喋ろうとしているので、情報が整理されず剥き出しとなって提示されるわけだが、辛抱強く監督は聞き続ける。カメラは次々と彼ら/彼女らのアジトを特定していく。半地下や廃墟にたむろし、タバコや酒片手に、警戒しながら監督に近づき赤裸々に生き様を語る。自殺をしたり絶望するのは罪だと考える子どもたちはしぶとく生きる。なぜ盗みをするのか?「生活がそう指示するからだ」と開き直り前へ向き続けるのである。しかし、彼ら/彼女らにも理性はある。それは少年院で明らかとなる。殺人囚だらけの空間の中に数百台もの車を盗んで投獄された少年がいる。怖くないのか?と訊くと、ここで殺しや盗みをしたってしょうがないだろ。あくまで相手は人間だから怖くはねぇ、と語る。このたくましさに圧倒された。彼の過去作同様、子どもたちは拠点を転々とする。少年院も数週間から数ヶ月しかいられない。それでも絶望せず生き続ける子どもたちに思わぬパワーを頂いたのであった。