【Netflix】『雪山の絆』知性を無残に振り払う自然の猛威

雪山の絆(2023)
原題:La sociedad de la nieve
英題:Society of the Snow

監督:J・A・バヨナ
出演:エンゾ・ヴォグリンシク、アグスティン・パルデッラ、マティアス・レカルトetc

評価:75点


おはようございます、チェ・ブンブンです。

アカデミー賞シーズンなので国際長編映画賞にノミネートされそうな作品を追っている。今回はNetflix映画『雪山の絆』を観た。雪山に飛行機が墜落してサバイバルする実話、『生きてこそ』みたいだなと思ったら同じウルグアイ空軍機571便遭難事故の映画化であった。今回、両方を観てみたのだが非常に興味深い作品であった。

『雪山の絆』あらすじ

「ジュラシック・ワールド 炎の王国」「永遠のこどもたち」のJ・A・バヨナ監督が14年ぶりに母国語であるスペイン語の映画を手がけ、1970年代にアンデス山脈で起きた遭難事故の実話をもとに描いた人間ドラマ。

1972年。ラグビー選手団を乗せてチリへ向かっていたチャーター機のウルグアイ空軍機571便が、アンデス山脈中心部の氷河に墜落した。乗客45名のうち生存者は29名。想像を絶する過酷な環境のなかに取り残された彼らは、生き延びるために究極の手段を取らざるを得ない状況に追い込まれていく。

事故機に搭乗していたラグビー選手団が所属するウルグアイのステラ・マリス学園に通っていた作家パブロ・ビエルチが事故から36年後に発表した著書を原作に、極限状態に置かれた人々の恐怖と葛藤、生への渇望と強い絆を描き出す。Netflixで2024年1月4日から配信。それに先立ち2023年12月22日から一部劇場で公開。

映画.comより引用

知性を無残に振り払う自然の猛威

J・A・バヨナは『インポッシブル』や『ジュラシック・ワールド 炎の王国』と破壊の脅威をリアルに理論立てて描く監督である。それを踏まえて本作を観ると、空軍機が墜落し、座席が先頭にズサッと移動し押し潰される描写や簡易シェルターとしての機内が雪崩で破壊される場面の生々しさに監督らしさを感じる。しかし、実はそうした描写の多くは『生きてこそ』にも全く同じ描写があり、こちらの方が肉体がひん曲がるグロテスクさを強調されている。実際の生存者のひとりであるナンド・パラードが監修しているだけあって『生きてこそ』もリアリズム路線であり、『雪山の絆』はそれを参照しながらリメイクしたように思える。

一方で、明確に『生きてこそ』と異なる部分があり、興味深いものとなっている。その部分とは、人間の描き方だ。『生きてこそ』の場合、リアリズム路線でありながらサバイバルアクションとしてのクリシェを通じて人間を描いている。墜落直前の機内では、悪ガキのように暴れ回るラグビー選手たち。乗務員の警告を無視するような連中が極限状態の中で、時に喧嘩をしながら生存ルートを見つけていくのだ。対して『雪山の絆』では、最初から知性を持った人たちとしてラグビー選手を捉えている。乱気流に巻き込まれて不安そうにしている仲間に絵で人間が自然に打ち勝つ知恵を解説する。乗務員の警告もちゃんと聞く。墜落してからは、冷静に粛々と団結しながら暖を取ったり、食料を纏めたりする。その場に置いて理想的な行動を最小手数でやっているように描くのだ。それだけに、そこまで真面目に事象へ向き合っても自然が彼らを生かすまいと立ち塞がる絶望感が強烈だ。また、人肉を食べるかどうか悩む場面んも法律、宗教、倫理と『生きてこそ』以上に多様な側面から議論するのだが、序盤に知性を押し出した作劇をすることによって生々しさがグッと上がっていくのである。

そして魚眼レンズタッチによる歪んだ視界を織り交ぜることで、観ている者もまるでその場で彼らと一緒に脱出方法を模索しているような感触を味わうことができる。

事象と対応に特化し、2時間半で描く作風は下手すれば退屈を引き起こしてしまう。そのため『生きてこそ』では、リポビタンDのCMのようなドラマティックなアクションを不自然に入れていたりする。だが『雪山の絆』では、その手法に敢えて挑戦し、竜頭蛇尾に陥ることなく駆け抜けてみせた。お見事な一本であった。アカデミー賞国際長編映画賞のサバイバル映画枠として『ゴッドランド GODLAND』とどちらがノミネートに漕ぎ着けられるのかがみものである。

※映画.comより画像引用