『オキュパイド・シティ』251分の拷問

オキュパイド・シティ(2023)
Occupied City

監督:スティーヴ・マックィーン

評価:0点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

TBSドキュメンタリー映画祭でA24×スティーヴ・マックィーンの4時間を超える作品が1回限りで上映された。それが『オキュパイド・シティ』である。どうやらコロナ禍のオランダと第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺の記憶を結びつける内容らしい。オランダといえばアンネ・フランクの家があった場所であり、「アンネの日記」が世界記憶遺産に登録されている。事前にクロード・ランズマンの3時間半近くあるドキュメンタリー『不正義の果て』を観て臨んだのだが、これが拷問レベルにキツかった。

『オキュパイド・シティ』概要

『それでも夜は明ける』『SHAME -シェイム-』のアカデミー賞受賞監督、スティーヴ・マックイーンが贈る、4時間を超える圧巻のドキュメンタリー。監督の妻であり歴史家のビアンカ・スティグターによる書籍「Atlas of an Occupied City (Amsterdam 1940-1945) 」をベースに、オランダ・アムステルダムのナチス占領下の記憶と、新型コロナウイルスによる緊急事態下の風景が、驚くべき形で重なり合ってゆく。A24製作作品。

※TBSドキュメンタリー映画祭サイトより引用

251分の拷問

本作は、現代オランダの日常風景を写真集のようにめくりながら、そこへホロコーストにまつわる歴史的事実の語りを載せていく作品である。そして、驚くべきことにこの単調さが4時間以上続くのである。最初の30分で嫌な予感がしたのだが、延々とオランダの風景を背に歴史講義を聞かされゲンナリした。クロード・ランズマンの場合は被写体に対するインタビューが主となっており、その語りの決定的瞬間を捉えているため歴史資料の挿入が極端に少なくとも飽きることなく観ることができた。一方で、本作は時系列が行ったり来たりしながら、断片的にアンネ・フランクのように隠れ家で暮らしていた人の暮らしやソビブルで起きた事件などが語られていく。それは映画というフォーマットを取る必要があったのか?本だけで完結していても良いのではと思わずにはいられない。また、事前情報でコロナ禍の生活と重なるとのことだったのだが、そこまでコロナ禍による厳戒態勢の空気感が伝わって来ず、ホロコースト下の抑圧された生活との関連性が薄かったのも気になった。そのため、睡魔と退屈さ、そして虚無が流れる4時間であったのだが、後半に明らかな交通事故、自転車が横転する決定的瞬間が収められており驚かされた。なぜこの映画でこの決定的事故の瞬間を挿入する必要があったのか理解に苦しむ。というわけで恐ろしい映画体験だったことを報告する。