劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの(2023)
監督:小中和哉
出演:黒島結菜、水瀬いのり、日野聡、渡辺明乃、本渡楓、松岡茉優、村方乃々佳、DAIGO、蒼井優
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
幼児向けアニメには驚かされることが多いので積極的に観に行くようにしている。今回は大人気おもちゃ「シルバニアファミリー」の映画『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』を観た。ゲームだと妖精とやらが落とし物をしてお使いに巻き込まれるようなイメージがあるのだが、そういった要素に頼らず牧歌的な作品に仕上がっていた。
『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』あらすじ
1985年の発売以来、世代を超えて親しまれてきたエポック社のドールハウス&人形「シルバニアファミリー」を3DCGアニメで初映画化。
美しい自然に囲まれたシルバニア村。元気なショコラウサギの女の子フレアは、優しい母テリーやパン作りをしている父フレイジャーとともに幸せな毎日を過ごしていた。シルバニア村ではもうすぐ年に一度の星祭りが開催されるが、フレアはその日に誕生日を迎える母へのプレゼントを何にするか思いつかず悩んでいた。そんな中、フレアは祭りのメインイベントである「今年の木」を選ぶ重要な役に指名されてしまう。
主人公フレアの声を、声優初挑戦となる黒島結菜が担当。そのほか松岡茉優、DAIGO、蒼井優、水瀬いのり、日野聡らが声の出演。「星空のむこうの国」でも組んだ小中和哉が監督、小林弘利が脚本を手がけた。「神在月のこども」の市川淳が音楽を担当。
模範的幼児向けアニメ
幼児向けアニメは、大人も唸る社会問題を物語へと置換していく様子が観測できる。それも1時間ぐらいでサクッとまとめてしまうので、ディズニー/ピクサーには見習ってほしいと思ったりする。とはいっても幼児向けアニメの世界は広い。子どもにとって身近なテーマを牧歌的に描く作品も当然ながらある。『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』はまさしくその代表であり、65分と短いランタイムを5つの章に分割することで、幼児が最初に観る映画としても退屈させないものとなっている。
物語はショコラウサギのフレアが母親の誕生日プレゼントをどうしようか悩むといったもの。各章では、友人と一緒にプレゼントを制作していく。その中で困難にぶつかると、孤高の存在であるブルースが現れ助け舟を出してくれる。その反復により、幼児は物語の型を覚え楽しんでいく。『劇場版ミッフィー どうぶつえんで宝さがし』に似た技法が使われている。
フレアをはじめとする登場人物の運動は省略をほとんど行わない丁寧なものとなっている。扉の開閉に始まり、作った楽器の動作検証も、少しずつ行っていく。大人が観るともどかしさを感じるものの、物語に慣れていない幼児向けと考えるととても丁寧だといえる。特に、本作は幼児向けアニメにありがちな第四の壁を破って応援を求める演出が後述する撮影タイムにのみ設けられているので、物語の没入は幼児に託されている。気を衒うことなく、運動を描くことでスムーズに物語に没入するようチューニングされているといえよう。
そんな牧歌的な作品である『劇場版 シルバニアファミリー フレアからのおくりもの』だが、一箇所強烈な場面が存在する。フレアが音楽好きな母のために楽器を作るのだが、その楽器から強烈な旋律が奏でられ、街を破壊する場面があるのだ。街を横切るように、ビキビキビキとガラスにヒビが入る。そして部屋の鏡がバキバキに割れるのだが、このシーンの描き込みがやたらと力が入っており、サイコスリラー映画で観たいレベルのクオリティに仕上がっていた。これを観るだけでも十分価値のある作品だと思う。
個人的には、ドールハウスの雰囲気を前面に押し出していたり、ピタゴラスイッチの要素があったりするので、ストップモーションアニメでやったら熱い作品だったなと少しがっかりしたのだが、それでも一定レベルのクオリティで駆け抜ける良作であった。
ちなみに配給がイオンだからか分からないのだが、『映画 おかあさんといっしょ』同様、映画の最後に写真撮影タイムが設けられている。親にとって子どもとの初めてを記憶することは重要である。その場を映画が主体的に設ける。映画館では写真撮影はダメだというルールはあるが、時にルールを緩めてみることも大事だなと幼児向け映画から学んだ。
※映画.comより画像引用