日々“hibi”AUG(2022)
監督:前田真二郎
『日々“hibi”AUG』概要
おはようございます、チェ・ブンブンです。
山形国際ドキュメンタリー映画祭にてユニークな実験映画が上映された。それが『日々”hibi”AUG』だ。本作は2008年から2022年の8月において毎日15秒の動画を撮り繋ぎ合わせたもの。昨今、TikTokやYouTube Shortsなど短い動画が注目されているが、それより遥か前から蓄積された動画から何か感じるものがあるのか?私は密林へと足を踏み入れた。
『日々“hibi”AUG』概要
作者が設定した「撮影/編集ルール」に則り、8月の「連日15秒x31カット」を15年間連ねることで生まれた長編。ルールとは、満月の日は深夜0時に撮影するなど月の運行に準じて毎日撮影時間帯をずらし、撮った映像から15秒を切り出しつなげていくというものだ。約1ヶ月かけて日の出から日没までの時間を映像に推移させ、撮影できなかった日には日付が表示される。ショットの集合体は互いに連関しないが、時折挿入される音楽や朗読により撹乱され、そこに作者のまなざしがふと立ち現れる。見る者の記憶を呼び覚まし、意味から解き放ち、新たに記憶を紡ぐための、映画の試み。
15秒×1ヶ月×15年
観る前は、淡々と15秒の動画を並べただけの単調な作品かと思ったが、緩急ある作品に仕上がっている。映えとは無関係な何気ない日常、車の通行、大学の授業、夜空などといった景色を捉え続けているのかと思いきや、年や週によっては特定の被写体にフォーカスがあたる。
例えば、連続して肉を切る動画が続いたりするのだ。またロボットのPepperやジョージ・オーウェル「1984年」に関しては音声だけが動画をまたがる。後者はあらすじについて長めの解説が入ったりするのだ。そして、観客が飽きてしまわないように途中でクイズが挿入されたりする。
実験映画と聞くと小難しいイメージがあるのだが、実に茶目っ気溢れる作品であった。作り込まれた短い動画による発信が主流となりつつある2020年代に、等身大の時間の流れ、自然体な遊び心溢れる短い動画の集合体である本作は重要な意味を持つ作品といえよう。
※映画.comより画像引用