キムズ・ビデオ(2022)
Kim’s Video
監督:デイヴィッド・レッドモン、アシュレイ・セイビン
評価:95点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
以前、CPH:DOX配信で五次元アリクイさん(@arikuigo)から紹介していただいた『キムズ・ビデオ』が山形国際ドキュメンタリー映画祭に来ると聞いたので観てきた。これが抱腹絶倒の傑作ドキュメンタリーであった。
『キムズ・ビデオ』概要
20年もの間、ニューヨークの映画ファンにとって、貴重かつマニアックな映画の宝庫にアクセスすることができる、キムズ・ビデオというビデオ・レンタル店が存在した。謎めいた人物 キム・ヨンマンが経営するクリーニング屋から派生し、5店舗まで拡大したその店は、最終的に55,000本のレンタル作品を集めるに至った。2008年、業界の変化に直面したキムは、自分のコレクションを手放すことを宣言する。観光業を活性化させる目論見もあり、イタリアのシチリア島サレミという小さな村が、彼のアーカイブの引き受け手に名乗り出る。伝説のコレクションの荒唐無稽な展開はその後いかに?
ミッション:シチリア島からVHSを奪還せよ!
伝説のレンタルビデオショップ「Kim’s Video」。アレックス・ロス・ペリーが通い、コーエン兄弟が600ドルも延滞金を溜め込む名店である。ビデオに魅せられた男キム・ヨンマンがあらゆる手段でマニアックな映画を入手する。中には違法のものもあり、一時期FBIに目をつけられたこともあったが映画マニアの間で愛されていた。しかし、サブスクリプションサービスの台頭により遂に「Kim’s Video」は閉店してしまう。5万本近いビデオはどうなったのか?監督が調査を進めると、なぜかシチリア島の小さな村サレミにあるらしい。「Kim’s Video」の博物館のようなものを作り観光スポット化する計画があったとのこと。しかし、実際に行ってみると、あまりに杜撰な管理がされていた。ビデオが泣いている!と思った彼は、キム・ヨンマンを探し出し、現状をみてもらったり、この計画の当事者に会って何があったのかを取材する。そして、彼は思い立つ!「盗もう!」と。『アルゴ』をはじめとする犯罪映画を観て、サレミからVHSを奪還するミッションが幕を開けるのであった。
次々と映画に例えながら映画愛だけに身を任せ暴走していく語りの面白さに爆笑した。時折、怖い描写も多く、政治家の車についていくと仄暗い場所で突如車が停止する。「映画だったら殺される場所じゃん」と撤収したり、「この状況はどのスコセッシ映画だろう」と妄想したりする。思わず笑ってしまう場面だが、状況的には全く笑えない怖さがある。これがこの映画の魅力にもなっている。それにしても映画愛だけで、キム・ヨンマンを見つけ出し、一緒にサレミまで同行してしまう行動力には脱帽である。これは日本公開してほしい作品だ。