RR(2007)
監督:ジェイムズ・ベニング
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
シアター・イメージフォーラムでジェイムズ・ベニング特集が開催されている。ジェイムズ・ベニングと私は因縁の関係であり、「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されている『Deseret』を観た時、ただスライドショーをしているだけの映画に見えて辟易してしまった。しかし最近、動画を撮るようになりマイケル・スノウ、ジャン=リュック・ゴダールなどといった実験映画監督に注目するようになった。今こそ、ジェイムズ・ベニング再挑戦のチャンスであろうと、2時間列車を映した作品『RR』を観た。これが素晴らしい作品であった。
『RR』概要
1970年代初頭から個人制作で映画作品やインスタレーションなどを精力的に制作し続けるアメリカの実験映画作家ジェームズ・ベニングが、アメリカ各地の列車が走る風景をとらえた作品。
ベニング監督が映画撮影の行き帰りなどで20州近くを旅しながら216本の列車を撮影し、その中から選んだ43本のショットで構成。ひとつのショットの長さは列車がフレーム内を走り抜けるまでとし、数両で終わるものから11分に及ぶものまである。アメリカ開拓の歴史は鉄道敷設の歴史でもあるが、現在は列車が運ぶのは人ではなく物であり、本作でも撮影された列車の多くが貨物列車である。
タイトルの「RR」は「Rail Road」の頭文字を並べたもの。特集上映「ジェイムズ・ベニング2023 アメリカ/時間/風景」(23年10月7~13日、シアター・イメージフォーラム)上映作品。
列車を撮るバリエーションは無限大
消失点へと向かって去っていく貨物列車。アメリカの荒野を走る貨物列車は長い。5分近くかけて全ての車両が消失点へと吸い込まれていく。次のショットでは遠くから、画の右横へと向かって来る列車を、その次のショットでは列車の通過を真横から撮る。列車を撮るとなると、撮り鉄が捉えるあの構図を思い浮かべるが、実際には多くの角度が存在する。列車だけが主役ではない。左下へ向かって来る列車、右下から車がやってきて数分にも渡る通過を待つ。列車が通り過ぎると、車が発進する。列車と車の運動がXの字を形成するのだ。また、大量に列車の画を並べることで、次に登場する列車は「向かって行く」のか、それとも「向かって来る」のか。また左右どちらから来るのかといったハラハラドキドキが生まれてくる。中には、何もないような風景から列車が飛び出してきたり、列車が通過した後に、フレームの外側でカーブを描いていることが判明し、遠くにさっきの列車が映るといった複雑な構図も飛び出してくる。まるで玩具箱をひっくり返したようなワクワクが詰まっているのだ。
個人的に『RR』のMVPは
1.向かって行く列車
2.向かって来る車
3.動きはじめて来る列車
4.向かって行く人
この4要素を同時に映し出してくる画だ。こんな複雑で情報量の多い列車シーンをかつて観たことがあったか?列車しか登場しない映画なのにここまで豊かな画になっているとは思いもよらなかったので感動した。
※映画.comより画像引用