『福田村事件』不安が臨界点を超えた時、人は簡単に……

福田村事件(2023)

監督:森達也
出演:井浦新(ARATA)、田中麗奈、永山瑛太(瑛太)、東出昌大、コムアイetc

評価:40点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『A』や『FAKE』などといったドキュメンタリーを手がけている森達也初の劇映画『福田村事件』。公開前から話題となっており、公開後数週間経っても劇場は混雑している。また、パンフレットの売れ行きもいいとのこと。最近忙しく、なかなか劇場へ行けなかったのだが、ついにテアトル新宿で観てきた。

『福田村事件』あらすじ

「A」「A2」「i 新聞記者ドキュメント」など、数々の社会派ドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也が自身初の劇映画作品として、関東大震災直後の混乱の中で実際に起こった虐殺事件・福田村事件を題材にメガホンを取ったドラマ。

1923年、澤田智一は教師をしていた日本統治下の京城(現・ソウル)を離れ、妻の静子とともに故郷の千葉県福田村に帰ってくる。澤田は日本軍が朝鮮で犯した虐殺事件の目撃者であったが、静子にもその事実を隠していた。その年の9月1日、関東地方を大地震が襲う。多くの人びとが大混乱となり、流言飛語が飛び交う9月6日、香川から関東へやってきた沼部新助率いる行商団15名は次の地に向かうために利根川の渡し場に向かう。沼部と渡し守の小さな口論に端を発した行き違いにより、興奮した村民の集団心理に火がつき、後に歴史に葬られる大虐殺が起こってしまう。

澤田夫妻役を井浦新、田中麗奈が演じるほか、永山瑛太、東出昌大、柄本明らが顔をそろえる。

映画.comより引用

不安が臨界点を超えた時、人は簡単に……

正直、終盤まで厳しい作品に感じた。状況説明の台詞が大半を占めるからだ。関東大震災の時に、情報が交差し、凄惨な事件に発展したことはよく知られている。その布石となる登場人物配置や説明に時間をかけているのだ。なので、新しい観点があるような感じではない。もちろん、これは今にも通じるものであり、他人事でもない。不安が偏見や事実確認する前にアクションを引き起こしてしまう様子を描いているので必要だったのだろう。だが、それにしても非常に退屈に感じた。だが、終盤に差し掛かってこの退屈さに重要な意味が付与されていく。緊張感が高まり、不安が不安を呼ぶ。それが臨界点に達した時、人は迷いなく殺人を犯すことができるのだ。あれだけ、他者との関係に目を配り、不安による加害を抑止してきた者がある一線を超えると、刀でサクッと殺す。周囲も便乗してフルボッコにし、川へと流す。この時のショットは集中線を描くように、ターゲットへ向かって人が寄って集るよう構成されている。このために前半の長い長い説明描写が存在していたことが判明する。とはいえ、そのギミックには惹き込まれたものの、やはり説明描写が気になった。脚本家は荒井晴彦一派なのだが、もう少し空間に語らせるようにできたのではないだろうかと思う。

※映画.comより画像引用