厳重に監視された列車(1966)
原題:Ostře sledované vlaky
英題:Closely Watched Trains
監督:イジー・メンツェル
出演:ヴァーツラフ・ネッカージ、ブラスティミール・ブロドスキー、ウラジミール・ヴァレンタ、イジー・メンツェルetc
評価:80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
アリ・アスターが『Beau is Afraid』を作る際に参照した映画として『厳重に監視された列車』を挙げている。彼は、ゴリゴリのシネフィル監督のようだとうかがえる。本作は「死ぬまでに観たい映画1001本」に掲載されていることから10年前に観ているのだが、『Beau is Afraid』に備えて再観してみた。以前だったら入手困難な作品だったのだが、今となってはEastern European Moviesがあるので、英語の壁さえ乗り越えれば容易にチェックできる良い時代である。
『厳重に監視された列車』あらすじ
チェコの名匠イジー・メンツェルの長編デビュー作で、アカデミー外国語映画賞受賞作。第2次大戦中、ナチスドイツ占領下のチェコを舞台に、恋愛や性の悩みを抱える青年ミロシュが、時代に翻弄されながら右往左往する姿をシニカルな笑いとともに描いた。日本では「2007 チェコ映画祭 in Yokohama」で上映された。
※映画.comより引用
あと少しでキスができたのに……
本作における自然が引き起こす運動は愛おしいものがある。自然といっても森林とかそういったものではなく、「あるがまま」の方の自然である。男が職員の女とキスをしようとする。あと少しで届くところで列車は出発してしまい、呆れた仲間がホイッスルを彼の口に当てる。自然が二人を引き裂き哀愁が生まれる。この決定的瞬間を収めている時点で映画の世界に観る者を引きずり込もうとする気概を感じる。職員のダラダラした運動とは反し、起こっていることは強烈であり、いろんなモノが爆発する。小屋でハリボテの飛行機と一緒に写真を撮る状況が、家の崩壊により現実が虚構を凌駕、侵食してしまう場面は本作屈指の名場面であろう。そしてアリ・アスターはリストの中にカレル・ゼマン『悪魔の発明』を入れていることから、恐らくこの一連の場面を引用しようとしていることが予想できる。そして映画は、大爆発に伴う壮絶なギャグ風とともにクライマックスを迎える。楽しいがいっぱいな作品だったことを思い出したのであった。
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