THE AGE OF STONE(2013)
IT IS NIGHT IN AMERICA(2022)
監督:Ana Vaz
評価:90点(両作品)
おはようございます、チェ・ブンブンです。
MUBIで今Ana Vaz特集が組まれている。Ana Vazは近年注目されている監督であり、2023年のベルリン国際映画祭に『The TREE』を出品していることでも知られている。今までも、定期的にMUBIで目撃していた監督だが、短編メインなこともありスルーしてきた。だが、なんとなく『THE AGE OF STONE』を観たら非常に面白かったので、併せて『IT IS NIGHT IN AMERICA』も観たどちらも素晴らしい作品であった。
概要
■『THE AGE OF STONE』
A voyage into the far west of Brazil leads to a monumental structure—petrified at the center of the savannah. As construction workers toil beneath the monument, the camera explores the trembling landscape encircling it, unearthing the geological traces of the creation of Brazil’s capital, Brasília.
訳:ブラジルの西の果てを旅していると、サバンナの中心に石化した巨大な建造物に行き着く。建設作業員がモニュメントの下で作業している間、カメラはモニュメントを取り囲む震える風景を探索し、ブラジルの首都ブラジリアが誕生した地質学的痕跡を掘り起こす。
■『IT IS NIGHT IN AMERICA』
In Brasília, the modern capital of Brazil, an anteater is found dead by the side of a road, a boa constrictor wanders across the suburbs, and foxes prowl vacant streets. Meanwhile, in the city zoo—home to hundreds of displaced and rescued wild species—the animals look back at us humans.
訳:ブラジルの近代的な首都ブラジリアでは、道端でアリクイの死体が発見され、ボアコンストリクターが郊外を徘徊し、キツネが空き地を徘徊している。一方、動物園では、保護された野生動物たちが私たち人間を見つめている。
※MUBIより引用
Ana Vaz監督に注目
Ana Vaz監督はブラジル出身の女性監督である。植民地主義が人間や人間以外にどのような影響を及ぼすのかを映像詩として描く作品が多いとのこと。そんな彼女の『IT IS NIGHT IN AMERICA』は、人間の文明によって傷つく動物を捉えている。都市と自然が対比される。夜の街に緊急コールが鳴り響く。スカンク、オポッサムのようなものが倒れているらしい。映画は単に文明による動物危害を声高らかに批判するのではなく、動物を救済していく側面を描く。アリクイに関しては、人工蟻塚を用意し、食事を提供する。そして、フクロウやサルの眼差しは、人間に対して「俺たちは君らを見ているぞ」と言いたげな鋭さを醸し出す。独特な青の色彩の中で描かれる人間と動物との関係性の美しさに惹き込まれた。
『THE AGE OF STONE』はさらに強烈な画が提示される。ブラジルのテーブル状になった雄大な崖が映し出される。次第に、人工的な音が響き渡る。岩を採掘する男が現れる。何十年、下手すれば100年規模で運用されてきたのであろう、採掘場。そのゆったりとした時間にロマンを感じさせる。すると、SF映画のような、奇怪な形をしたオブジェ、まるで魚の骨のような建築が現れるのだ。建物としての機能は果たしておらず、なんのために?どうやって?といった疑問が浮かぶ。人類の叡智、人智を超えたようなものに触れた感動がそこにあった。
※MUBIより画像引用