【カンヌ国際映画祭特集】『動き出すかつての夢』廃墟の中での曖昧さ

動き出すかつての夢(2001)
Ce vieux rêve qui bouge

監督:アラン・ギロディー
出演:ピエール・ルイス=カリクト、Jean-Marie Combelles、Jean Ségani、Yves Dinse、Serge Ribes etc

評価:65点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ノーバディーズ・ヒーロー』のアラン・ギロディー監督がカンヌ国際映画祭に出品し、ジャン=リュック・ゴダールが賞賛した作品『動き出すかつての夢』を観た。彼は一貫して独特な空間の中で性と運動を描いているが、本作もその一本であった。

『動き出すかつての夢』あらすじ

Dans une usine en déclin et où il ne reste plus qu’une poignée d’ouvriers, un jeune technicien vient démonter une dernière machine. Tandis qu’il travaille, les ouvriers attendent la fin de la semaine en bavardant et en se promenant. Quelques événements inattendus se préparent.
訳:労働者が残り少なくなった衰退した工場に、最後の機械を解体するために若い技術者がやってくる。彼が作業する間、労働者たちは談笑しながら週明けを待っている。そんな中、思いがけない出来事が起こる。

Allocinéより引用

廃墟の中での曖昧さ

男が工場の前で待っている。そこに人が通りかかる。挨拶をするのだが、味気ない対応をされ続ける。ようやく、約束の男が現れ、中へと入るのだが、あれだけの人が工場へと吸い込まれたにもかかわらず、人の気配が感じられない。廃墟で男は機械の修理をすることになるが、上手くいかないようだ。それを上司が見にくる。休憩所では男たちが休んでいる。これだけ聞くと、よくある職場のように思えるが、空間はハッテン場のようなムードを醸し出すのだ。しかし、同性愛について言及すると否定される。廃墟の、かつて人がいたような気配が、同性愛者たちの空間のようでそうではない曖昧さを作り上げていく。恐らく同性愛的な関係であるのだが、社会の目から逃れるように、言及に対しては否定していく。そして気配だけを残して、ユートピアを作ろうとする。『湖の見知らぬ男』に通じる観点はすでにこの作品で現れていたように思える。