【A24】『Pearl パール』もしも、現実逃避した先に現実があったら……

Pearl パール(2022)
Pearl

監督:タイ・ウェスト
出演:ミア・ゴス、デヴィッド・コレンスウェット、タンディ・ライト、マシュー・サンダーランド、エマ・ジェンキンス=プーロetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

A24配給作品『X エックス』の前日譚『Pearl パール』が2023/7/7(金)より日本公開が決まった。試写にて一足早く鑑賞したのだが、前作未観でも問題ない作品であった。

『Pearl パール』あらすじ

Trapped on her family’s isolated farm, Pearl must tend to her ailing father under the bitter and overbearing watch of her devout mother. Lusting for a glamorous life like she’s seen in the movies, Pearl’s ambitions, temptations, and repressions collide.
訳:パールは、一家の孤立した農場に閉じ込められ、敬虔な母の厳しい監視のもと、病弱な父の世話をしなければならない。映画で見たような華やかな生活に憧れていたパールは、野心と誘惑、そして抑圧がぶつかり合う。

※MUBIより引用

もしも、現実逃避した先に現実があったら……

農場で暮らすパールは、毒親に悩まされていた。母の監視は厳しく、食事を取り上げられることもあった。車椅子生活の父親の世話を強いられ、自由がなかった。そんな彼女は映画に夢を見出す。映写室の男との出会い、オーディションの存在によって、彼女は辛い現実を忘れるように虚構に溺れるようになり、やがてオーディションを目指すようになる。目指すはダンサー。どんなに辛い状況でも楽しく踊る。自分こそがダンサーに相応しいと思うが、それと同時に彼女の行動に異変が発生する。

過酷な現実から逃れる中で、内なる世界に引き篭もる。虚構が現実を侵食する様を、総天然色の世界で彩る。色鮮やかな世界から垣間見える、異様さが魅力的な作品であり、例えばミュージカル映画に対する憧れが描かれているはずなのに、戦争映画が投影される様子に不気味さを感じる。確かに現実は凄惨である。我々の日常にも、それはあり、例えば転職サイトに登録すると企業からオファーがあるが、いざ応募してみると書類で「うちの会社に見合わないから採用を見送ります」と言われたりする。これに近い痛々しさが「現実」として襲いかかってくる。

とはいえ、タイ・ウェストはこの生々しい物語を、画面分割や長回しとしってテクニカルな演出でカラッと仕上げてくるので心の処方箋となるホラー作品といえよう。

※MUBIより画像引用

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