【推しの子】Mother and Children(2023)
監督:平牧大輔
出演:大塚剛央、伊駒ゆりえ、伊東健人、高柳知葉、内山夕実、潘めぐみetc
評価:90点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
最近、Twitter界隈で話題となっている『推しの子』をNetflixで観た。本作は赤坂アカ&横槍メンゴの同名漫画のアニメシリーズ化。第一話は80分程度あり、劇場でも公開された作品だ。赤坂アカといえば、『かぐや様は告らせたい』の作者ということぐらいしか知らず、てっきりアイドルの王道成長譚なのかなと思ったら、恐ろしい程に陰惨な話であった。確かにNetflixにてR16指定なのも納得な作品だった。しかも、厄介なことに物語の性質上、ネタバレなしで話すことが困難を極める作品でもある。ということで、今回はネタバレありで語っていく。
『【推しの子】Mother and Children』あらすじ
「かぐや様は告らせたい」の赤坂アカ原作、「クズの本懐」の横槍メンゴ作画による「週刊ヤングジャンプ」連載の人気コミックを原作とする2023年4月放送開始のテレビアニメ「【推しの子】」の第1話(90分拡大版)を放送に先駆けて劇場上映。
とある地方都市の病院に勤める産婦人科医・ゴロー。ある日、ゴローの推しアイドルである「B小町」のアイが彼の診察室に現れる。アイはある秘密を抱えており、ゴローは彼女との“最悪”の出会いをきっかけに数奇な運命に巻き込まれていく。
「可愛いだけじゃない式守さん」などの動画工房がアニメーション制作を手がけ、「私に天使が舞い降りた!」の平牧大輔が監督、「彼女、お借りします」の平山寛菜がキャラクターデザインを担当。
偶像は嘘でできている
地方都市で産婦人科を務める男・ゴローの元に、推しのアイドルがやってくる。休止したアイドル・アイは実は妊娠をしており、メディアの目を逃れるように産婦人科へと訪れたのだ。てっきり、バレるかバレないかサスペンスをラブコメディタッチで描くのかと思いきや、数分後には出産日を迎える。そしてゴローは何者かに殺され、アイの子どもとして転生するのである。赤子の目線からアイを見たときに明らかとなる業界の闇にフォーカスが当たっていく。
アイドル業界はキラキラしている。楽しいこと、好きなことをして生きているように見えるが、現実は異なる。個人では売れないので、セット売りとしてアイドルグループをメディアに露出させる。プライベートもなく、練習あるのみだが、才能だけではのしあがることができない。業界政治や運が幾重にも絡まりようやく手に入る栄光なのだ。そして、大衆から偶像として崇められる時、自己は偶像に押し込められる。アイドルとしての成長は賞賛されるが、人間としての成長は受け入れられない。そのため、アイは赤子の存在を隠し通さなければならないのだ。そして、その犠牲となるのがマネージャーの妻で、望まぬ育児に憎悪を募らせていく。
芸能界の本音を余すことなく吐き出していき、煌びやかな偶像が血と涙と嘘によってできていることを嫌というほど観るものに殴りつけていく。それを、ひとつまみのコメディタッチやジャンルもののクリシェで急上昇、急降下、急旋回させていくので、この物語がどこへ着地するのか分からぬまま、業界の混沌をエンターテイメントへと昇華させていく。邪悪な『パリピ孔明』として楽しく観た。第二章では、壮絶な復讐劇へと物語がシフトしていくので今後の動向が楽しみである。
※映画.comより画像引用