シック・オブ・マイセルフ(2022)
英題：Sick of Myself
原題：Syk pike
監督：クリストファー・ボーグリ
出演：クリスティン・クヤトゥ・ソープ、Eirik Sæther、Fanny Vaager、Sarah Francesca Brænne、フレドリック・ステンバーグ・ディトリウ・シモンセンetc
評価：80点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
ジョージア行きの飛行機でジョン・ウォーターズが2022年ベスト映画のひとつに選んでいたノルウェー映画『Sick of Myself』があったので観た。『わたしは最悪。』をさらに猛毒に煮込んだような激ヤバ映画であった。
『Sick of Myself』あらすじ
Increasingly overshadowed by her boyfriend’s recent rise to fame as a contemporary artist creating sculptures from stolen furniture, Signe hatches a vicious plan to reclaim her rightfully deserved attention within the milieu of Oslo’s cultural elite.
訳：恋人が盗んだ家具を彫刻にする現代美術家として有名になり、ますます影が薄くなったシグネは、オスロの文化的エリートの中で自分の正当な評価を取り戻そうと悪だくみをする。
構ってくれるならグチャグチャな顔な私が好き
他者を不快にさせることを趣味にしている夫婦は競い合うように嫌がらせをしている。まるで自分の中に潜んだ悪意を吐露するように周囲を困らせ続ける。しっぺ返しとして、シグネに修羅場が到来するがそれは他者から構ってもらえることを意味するため、嬉々としてその流れに乗る。例えば、会食の場で重度のナッツアレルギーであるフリをする。しかし、食事手配のミスでナッツ入りの料理を食べてしまった彼女は、全力で演じ切る必要が出てくる。犬に耳を食われた夫人が、カフェで仕事している彼女に飛びかかる。彼女は犬に耳を食われたいと思い、他人のペットに語りかける。犬は彼女の誘いに乗らない。そんな彼女の歪んだ欲求の暴走は、薬物へとシフトしていく。薬物に溺れた彼女には湿疹が現れ、やがて顔がグチャグチャになる。しかし、彼女の気分は落ち込まない。むしろ、唯一無二の身体を手にしたと感じ、モデルになろうとするのだ。承認欲求溢れた、現代社会を風刺した本作は、身体的異常ですら個性だと思い、身を滅ぼしながら他者からの関心を渇望する者を的確に描いている。
恐ろしくグロテスクな本作、ジョン・ウォーターズが気に入るのも納得な作品であった。
※MUBIより画像引用
