『なのに、千輝くんが甘すぎる。』眼差しの玉突き事故が片思いごっこで大惨事に

なのに、千輝くんが甘すぎる。(2023)

監督:新城毅彦
出演:高橋恭平、畑芽育、板垣李光人、莉子、曽田陵介、箭内夢菜、鈴木美羽、中島瑠菜、末永光etc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ここ1ヶ月くらい、「死ぬまでに観たい映画1001本」フルマラソンに集中していたため、新作を観に行けなかった。ようやく全作品鑑賞が終了したので、チェックしていた『なのに、千輝くんが甘すぎる。』を観に行ってみた。青春キラキラ映画は、中高生のありあまる体力が画面の中で暴走していくあたりが面白く、日本流スクリューボールコメディとして注目している。コロナ禍になって以降は勢いが衰えたように思えるが本作を観ると、そんなことはなかった。

『なのに、千輝くんが甘すぎる。』あらすじ

講談社「月刊デザート」連載の亜南くじらによる人気コミックを実写映画化し、アイドルグループ「なにわ男子」の高橋恭平が映画初主演を務めた青春ラブストーリー。

人生初の告白に挑み失恋した高校2年生の真綾は、落ち込んでいるところを陸上部のエースであるイケメン男子・千輝(ちぎら)くんに見られてしまう。周囲には塩対応な千輝くんだったが、なぜか真綾に“片思いごっこ”を提案。それは真綾が千輝くんに片思いのフリをするというもので、周囲にバレないこと、そして本当に好きにならないことが条件だった。しかし自分にだけ甘すぎる千輝くんとの秘密の関係に、真綾の気持ちは揺れ動いてしまう。

千輝くん役を高橋が務め、ドラマ「女子高生の無駄づかい」の畑芽育がヒロインの真綾を演じる。監督は「四月は君の嘘」の新城毅彦、脚本は「ラジエーションハウス」の大北はるか。

映画.comより引用

眼差しの玉突き事故が片思いごっこで大惨事に

真綾は物陰から、熱い眼差しを向けている。それは陸上部のイケメン千輝(ちぎら)くん……かと思いきや、園芸部の男だった。ウォールフラワーのオタク系男子、仕留められるかと思いきや、まさかの振られる事案が発生。しかも、SNSで「ブス」呼ばわりされる凄惨な失恋になってしまうのだ。そんな彼女になぜか千輝くんが迫る。

「僕に片思いして上書きしなよ。」

彼は高嶺の花。常に女子が群がっている。そんな彼女たちを押し退けて、やたらと構ってくれる彼。突然始まる「片思いごっこ」。この関係がバレたら大変なことになってしまう。真綾は、仲良しな女友達、男友達の目を掻い潜って親密な関係を紡ごうとする。

本作は、徹底してアクションを中断させ、眼差しを合わせないことで物語をスリリングに進めていくタイプの作品である。真綾、千輝、そしてライバル格の男に、彼女の親友。そして、園芸部の男がバチバチと眼差しをぶつけ合う。例えば、真綾が「片思いごっこ」のミッションで、千輝くんと目線を合わせようとする場面がある。必死に凝視をするのだが、なかなか振り向いてもらえない。そこへ「何しているの」と邪魔が入る。彼女が横を向くと、ようやく千輝くんが眼差しを向ける。だが、視線は交わらないのだ。なにわ男子・高橋恭平演じる千輝くんの独特な間合いの詰め方は、彼女を困惑させていく。休日の公園で眼差しを向ける彼女の背後を颯爽と奪い、二人だけの空間を作る。突然、彼女の膝に頭を乗せてクワっと目を開き、彼女を見つめる。電車の中でも、気がつけば真横にいるのだ。学校では女に囲まれているはずなのに、確実に二人だけの空間を作ってくる怖さ、そして「片思いごっこ」という制約を課してしまったため、両思いになってはいけないと思い込む真綾。これが絶妙なこじれを生み出していき、物語を思わぬ方向へと動かしていく。

青春キラキラ映画あるあるである、「感情が高まると女の子が走る」を千輝くんに付与して華麗に90分駆け抜けてみせた。

新城毅彦監督作品は、『四月は君の嘘』以来であったがとても面白い作品であった。

※映画.comより画像引用