【MUBI】『RER B』顕わになる二つの美

RER B(2017)

監督:アリス・ディオップ

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第79回ヴェネツィア国際映画祭審査員大賞を受賞した『Saint Omer』。本作を監督したアリス・ディオップ作品はMUBIで5本観られる。今回は1分映画『RER B』を観ました。

『RER B』概要

In the half light of sunset, French artist Benoît Peyrucq observes and paints the RER B train in motion from a bridge in Drancy. A suburban train line opened in 1977, the RER B crosses the greater Paris region from north to south, carrying more than a million passengers every year.
訳:フランス人アーティスト、ブノワ・ペリュックは、夕暮れの中、ドランシーの橋の上から走行中のRER B列車を観察し、絵を描いている。1977年に開通したRER Bは、パリを南北に横断する郊外電車で、毎年100万人以上の乗客が利用している。

MUBIより引用

顕わになる二つの美

RER線の線路を色彩豊かに描きこむ。やがてそこに列車の音が聞こえてくる。カメラはパンをしていく。そこには後光差し込む線路がある。本作は絵画と現実の景色の差を指摘する。構図こそは同じだが、現実と異なるのが絵である。しかし、絵は描き手の主観がある。後光はなくとも、空間と色彩によって美を生み出せる。これはドキュメンタリー映画も同様である。事実を繋ぎ合わせてドキュメンタリー映画は作られる。しかし、そこには監督の主観がある。主観によって物語が紡がれていくため、絵画同様フィクショナルな側面がある。アリス・デイオップ監督は歴史や社会学を専攻していたとのこと。この虚構と現実を対比させる1分映画から、歴史とは何か?ドキュメンタリーとは事実を映す鏡なのか?といった問いに答えているような気がした。

※MUBIより画像引用