アメリカン・ポストカード(1975)
原題:American Torso
英題:American Postcard
監督:ボーディ・ガーボル
出演:チュトロシュ・シャーンドル、チェルハルミ・ジョルジョetc
評価:100点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
東京フィルメックスのラインナップは渋い。特に2004年の第5回東京フィルメックスは非常に攻めたラインナップとなっており、特集でガイ・マディン、内田吐夢、ボーディ・ガーボルが顔を並べているのだ。今回はハンガリーの異端児ボーディ・ガーボルの作品『アメリカン・ポストカード』を観てみた。これが衝撃的な作品であった。
『アメリカン・ポストカード』あらすじ
南北戦争中のアメリカを舞台に、土地の測量に従事する3人の亡命ハンガリー人たちの物語を描く。独特なフェード・イン、画面の一部を隠すマスクの多用など、様々な実験的手法を駆使した驚嘆すべき長編デビュー作。
※第5回東京フィルメックスサイトより引用
くしゃっと丸められた画
スナイパーライフルのような照準が広大な土地を移動する。そして十字架を目撃する。銃声が響く。緊迫感の中、照準は移動し続け、やがて測量士を捉える。測量士は、銃声が響き渡る中、図にメモを撮る。紙が、銃弾で切り裂かれても気にしない。雷のように光が眩く中、彼は馬で去っていく。本作は、西部開拓時代のフロンティア精神を感じさせる西部劇でありながら、ユニークな映像表現を捲し立てるように展開していくのが特徴だ。四縁を丸くした寓話テイストの画に、白い枠を重ねた凝視、スナイパーライフルのような照準が自由自在に動く。そのパワフルな画にただただ驚かされる。物語うんぬんではない、視覚的面白さに殴られている感覚に陥る。
極め付けは終盤に、「アルプスの少女ハイジ」さながら、大きなブランコに乗りながら、ダイナミックにカメラを動かす。すると、画がくしゃっと丸まり、一部分だけが映る演出が挿入される。また、測量士が目で線を引く様子を、点線でフィルムに書き込んで表現したりする。今まで、1万本近く観てきたが、意表をつく映像表現はまだまだ大海原に隠されているんだなと思った。
全く言語化できてないのですが、これはとんでもない作品なのは間違いありません。EASTERN EUROPEAN MOVIESで配信中なので是非。
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※IMDbより画像引用