グエロス(2014)
GUEROS
監督:アロンソ・ルイスパラシオス
出演:テノッチ・ウエルタ、セバスティアン・アギーレ、イルセ・サラスetc
評価:60点
おはようございます、チェ・ブンブンです。
今注目しているメキシコの監督アロンソ・ルイスパラシオス。一貫してジャンルを横断していく物語は、『MUSEO』のような古典的なケイパーものでも思わぬ味を魅せてくれる。『コップ・ムービー』はメキシコ警察24時から、メキシコ社会の問題を炙り出す意欲作であり第71回ベルリン国際映画祭で芸術貢献賞した。さて、今回は第64回ベルリン国際映画祭で最優秀初監督作に選ばれた『グエロス』を観ました。
『グエロス』あらすじ
大学のストライキ中、学生のソンブラとサントスは、メキシコシティーの古アパートで怠惰な日々を送っていた。ある日、ソンブラの弟トーマスが部屋に転がり込んできた。3人はトーマスが憧れる伝説のミュージシャンが、今や病床に伏していると知り、彼を探しに向かうが…。学生運動で荒れる大学構内や危険なスラム街などをリアルなモノクロ映像で描き出すロード・ムービー。2014年ベルリン国際映画祭で初監督作品賞受賞。ガエル・ガルシア・ベルナルが製作に関わっている。
※ラテンビート映画祭2014より引用
メキシコ、停滞する学生たちの日々
水風船が空から落ちてくる。これが人にあたる。若者は屋上から逃亡する。この水風船事件を受けて母親はトーマス(セバスティアン・アギーレ)をメキシコシティにいるソンブラ(テノッチ・ウエルタ)の家に預けることとなる。1999年のメキシコシティは学園闘争が起きている。メキシコ国立自治大学では連日ストライキが行われているが、ソンブラは薄汚れた集合住宅でダラダラと過ごしている。モラトリアムな日常を送っているのだ。そんな停滞した日常を魅力的に撮る。薄暗い部屋の中で糸電話を使って話す。駐車場でボンネットに乗りながらダラダラとする。何気ない引き伸ばされた日常に輝ける青春を感じるのだ。
序盤の停滞した青春ものはミュージシャンを探すロードムービーに発展していく。ただ、その旅路に爽快さはなく、突然高速道路で止まったりする。あくまで停滞の青春を描こうとしているのだ。この高速道路のシーンの編集がカッコイイ。車の中から高速道路を撮る。停車する車を避けるように、他車が動く。プーとクラクションがなる。すると空撮で、異様な停車を捉えていくのだ。
アロンソ・ルイスパラシオスはジャンル横断型の監督であると先述したが、今回はストライキで燃え上がる学生の肖像を織り交ぜることで停滞する青春と躍動の青春ドラマを同時に描いている。また、恋愛描写の一部はサイレント映画として撮られている。かと思ったら、集合住宅の上層部から猛スピードで階段を駆け下り、雪崩れ込むように喧嘩を始めるアクションパートもある。
アロンソ・ルイスパラシオスは長編デビュー作から個性的な監督であった。
※MUBIより画像引用